「たまには、君も」大神×メル　90000打リク（11/06月作成）

風邪を引いた。
道理でこの数日喉が痛かった筈だとベッドに横になりながらメルはぼんやりと天井を見つめる。
喉の痛みと共に熱も上がってきた気がする。
シーは薬を貰ってくると言って出掛けてしまった。
静かな部屋で独り、咳をしていると妙に不安になってくる。
眠ってしまおうと目を閉じると扉の方からカタッと音がして誰かが入って来た気配。
シーが帰って来たのかもしれないと声を待つが、聞こえてきた足音に耳を疑う。
「…大神、さん…？」
「ん？…ああ、ごめん。起こしちゃったね」
メルの声に苦笑しながら答える大神。
動揺して、思わず布団を鼻まで上げるメル。
「ど、どうして大神さんが？」
「心配で様子を見に来たんだけど、シーくんに看病を頼まれてね」
そう手に持っている薬を見せる大神。
「そんな、大神さんにそんな事させられません！けほっ…」
恥ずかしさから起き上がってつい強く言ってしまって思わず咳き込む。
「ほら、無理するから」
メルの背中を擦る大神。
「だ、大丈夫です」
大神の手を制したメルに大神が言う。
「…迷惑だったよね、突然押しかけて」
沈んだ声でそう言った大神に、慌ててフォローするメル。
「い、いえ。迷惑とかそう言うのじゃなくてその…」
「…良かった。迷惑じゃないんだね？」
「は、はい。…って、え？」
顔を上げて悪戯っぽく笑った大神に苦笑する。
またやられてしまったらしい。
脱力して肩を落とすメル。
「もう、本当に狡いです…」
「はは。ごめん。メルくんにいつも助けられてるからこんな時位は俺に甘えて欲しかったんだ」
そうメルの額に自分の額をつける大神。
咄嗟の事に頭がついていかず呆然とするメル。
「うーん。ちょっと熱いね。」
顔を離してそう言った大神にメルの顔が一気に朱く染まる。
「そ、そういう事をされたら熱くもなります…」
非難めいた口調でつい言ってしまい、申し訳なさそうに大神を見る。
「そうか。ごめん。でも、熱いのは本当だからもう少し横になった方が良い」
気にしないでとでも言わんばかりにメルに微笑み返す大神。
「はい…」
「ああ。そうだ。シーくんから薬を預かっていたんだった。今、水を用意するよ」
サイドテーブルに置かれた水差しからグラスに水を注ぐ大神。
「すみません、大神さんにいろいろ…」
「謝らないでいいよ。お互い様なんだし。その代わり、俺が風邪引いた時にはメルくんが看病してくれるかな？」
「…はい」
「ありがとう。はい、薬」
「…ありがとうございます」
大神から薬と水を受け取るメル。
そんなメルを見て､大神が思案顔で言う。
「もし飲みづらいようだったら口移ししようか？」
「はい？…け、結構です！一人で飲めます！」
顔を真っ赤にして一気に薬を飲み干すメル。
「それは残念。…それじゃ、もう少し眠った方が良いよ」
戯けていたと思ったら真面目な顔でそう言うから、本当に敵わないと思うのだ。
「…はい…」
頷いて横になるメル。
横目でチラと大神を見るととても優しそうな顔をしていて、思わず見とれてしまう。
そんなメルの視線に気付いたのかメルの髪を撫でる大神。
「おやすみ、メルくん」
「…おやすみなさい」
恥ずかしそうにそう言ってメルが目を閉じる。
薬の効き目か大神が居る事の安心感か心地良い微睡みが降りてきて、メルを眠りに誘っていく。
そんなメルを見つめながら、大神が独り言ちる。
「…口移し、ちょっと本気だったんだけどね」
そう苦笑するとメルの肩に毛布を掛けた─。

リクエストは大メルで「メルが風邪引いて大神が看病する話」でした。
大神さんのこの狡さは書いてて本当に楽しい。
さらっとメルを困らせる事を言えば良いと思います(*´∀｀)
そして、大メルのシーは大神さんと結託してると良い(笑）

杜一さま、リクエストありがとうございました！