『本日未明』ロベグリ R15 (10/04月作成)

─例えば。
朝になるのを待てないほど、その時を共に過ごしたい人が居るだとか。
朝になるのを待てないほど、その時に祝って欲しい人が居るだとか。
朝になるのを待てないほど、その時に真っ先に聞くのがその人の声でありたいとか。
そんな事を密かに思いながら、前夜を過ごしていたりとか。
そんな夜の話。

1929年4月17日深夜。
グリシーヌ・ブルーメールは時計の針が先程から遅々としてその時にならない事に憂いていた。
そんなグリシーヌの心情を知ってか知らずかいつもと変わらない様子でグラスを傾けるロベリア。
「…おい」
時計ばかりを気にするグリシーヌをロベリアが呼ぶ。
ところが、心此処にあらずといった感じのグリシーヌ。
「…ちっ」
小さく舌打ちをして立ち上がるロベリア。
「…待て。何処へ行くのだ?」
突然立ち上がったロベリアにようやくグリシーヌが我に返る。
「何処でもいいだろ?アンタはそれどころじゃないみたいだからね」
そう時計をチラと見たロベリアに顔を赤くするグリシーヌ。
反論できずに俯く。
「お忙しい誰かさんは用があるんだろう?」
「違う!」
「じゃあ、何だよ?」
「……っ…」
そう聞かれて、自分の誕生日になる瞬間を祝って欲しかったから、などと言える訳もない。
羞恥心から口をつぐむ。
「ひ・み・つってやつか?」
グリシーヌに顔を近付けるロベリア。
「…上等だ」
不敵に笑うと、グリシーヌの襟元へ指を滑らせ鎖骨をなぞるように触った。
「…っ…何をする…?!」
ロベリアの行動に非難の表情でグリシーヌが言う。
「秘密さ。誰かさんお得意のな」
低く笑うロベリア。
ただ誕生日を祝って欲しかったのにどうしてこういう展開になってしまったのか唇を噛むグリシーヌ。
そんなグリシーヌに顔を近付けるとロベリアは噛み付くように唇を奪った。
「……っ…」
避けようと顔を背けるが頭を手で抑えられ、閉じた唇もロベリアが舌で強引に押し開く。
「……は……っ……ん…っ…」
舌先を強く吸われ、意志とは逆に甘い息が漏れる。
少しの息継ぐ間しか与えないその強引なキスに目眩がしてグリシーヌの目が潤む。
そして。
気が付けば、そのキスに夢中になっていた。
自然と舌を絡め、熱い吐息を交わし合う。
唇が離れたかと思ったら、貪るようにすぐに奪われる。
頭が真っ白になって、支えられて立っているのがやっとだった。
どうしてそうなってしまったかなど、既にぼんやりと頭の隅に追いやられていた。
ようやく気の遠くなるようなそのキスから解放されるとグリシーヌはロベリアに抱きつくように脱力した。
そんなグリシーヌを支えながら、ロベリアが問う。
「…で、アンタは今日でいくつになった?」
予想外の質問に体の力は入らないものの霧が晴れたように我に返るグリシーヌ。
時計を見ると、ちょうどその時を過ぎたばかりで。
「…知っておったのか?!」
「知らないとでも思ったのかよ?」
「無関心そうだったではないか」
「アタシがアンタと一緒になって浮かれてたら、ただのコメディだろうが。それもクソつまらないね」
そんなのは御免だと吐き捨てるように言うロベリア。
「それもそうだな」
妙に納得して頷くグリシーヌ。
「ふん…」
「ふふっ…」
「で?」
「20歳だ」
「へぇ、アタシがアンタと初めて会った時と同じだな」
「そうか」
「ああ」
それから、目を合わせると。
グリシーヌの手を取って、その指先にキスを落とすロベリア。
「…Bon Anniversaire」
次は髪に。
「…Bon Anniversaire」
次は額に。
「…Bon Anniversaire」
次は頬に。
「…Bon Anniversaire」
そして、最後は再び唇に。
「…Bon Anniversaire」
甘いキスの応酬にうっとりと嬉しそうな様子のグリシーヌにロベリアが囁くように言う。
「…これ位で満足なんかしないだろう?」
その言葉に頬を染めて小さく頷くと、グリシーヌはロベリアを自分の方に引き寄せるようにソファに横になった。
恍惚でこの上ない誕生日の始まり─。

~あとがき~

…と、言う訳でグリ誕SSでしたー。
いつも以上に砂吐き仕様。
いつもと変わらないですか?(笑
いや、何というか。
DVD観てると、この二人は公式カプだよなと思います O(≧∇≦)O
ケンカも好きだけど、「モンパルナスの夜」の演出はたまりません。
すれ違う瞬間とかが、もう!もう!(落ち着け
もとい。
グリ、お誕生日おめでとう!!
と、いうことで。

あ。そして、この話の続きが”裏”にあります。

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