『嘘でもいいから』ロベグリ(10/04月作成)

「アンタが会いたいって思った時に、会いに来てやるよ」
「私にそなたを呼び出せと申すのか?!次を決めれば良い話であろう」
「アタシがいつでもキネマトロンの前にいるわけないだろうが。それに、”約束”するのはアタシの信条じゃないんでね」
その夜。
そう言うとロベリアは、いつものように窓から出て行った。
開いたままの窓から月の光が漏れる。
グリシーヌが窓を閉めるついでに外を見た時には、もうロベリアの姿はない。
今まで一緒にいたのは幻かと思うくらい呆気ない。
窓を閉めて振り返るとテーブルの上にはグラスが2つ乗っていて、もう一人そこに居たことを感じさせてくれる。
ロベリアの使っていたグラスを手にして見つめて、グリシーヌが呟くように言う。
「…嘘でもよいから約束くらいせぬか、馬鹿者…」
─それから。
数日経っただろうか。
自室でソファに座って戦術指南書に目を通すグリシーヌ。
だが、指がただページを捲るだけで内容はさほど頭には入って来ていない。
思わずため息を吐き、諦めたように本を閉じる。
原因は解っている。
「…不覚過ぎる…」
窓の方を見つめながら、頭を振る。
「…私ばかりが振り回されて馬鹿みたいだ…」
自嘲気味にそう独りごちて、立ち上がると。
「─誰が馬鹿みたいだって?」
思い掛けない気配に振り返ると入口の扉の前にロベリア。
「何処から入って来たのだ!?」
驚きからつい語調が強くなるグリシーヌ。
「アンタの部屋の前の廊下」
「は?」
「たまには人並みに此処から来ようと思ってね」
不敵に笑って扉に視線を向けるロベリアにすっかり意表を突かれた格好のグリシーヌ。
「それならそれらしく入って来ぬか!」
「そんなのアタシの勝手だろうが」
「もうよい!」
「………」
グリシーヌの態度に何かを感じ取ったのか、歩み寄り後ろから抱き締めるロベリア。
「…窓をずっと見ていたんだろう」
「なっ…」
図星を指され、羞恥心で顔が熱くなる。
「アタシが来るのを待ち焦がれてたんだろうが」
「そうであると何故言える!?」
ロベリアの腕を強く掴んでグリシーヌが問う。
「アンタがアタシ以外を待つ訳がないからね」
「自信過剰だな」
「この前言っただろう?アンタが会いたくなったら、会いに来るって」
「だから、来たと言うのか?」
「まぁね」
ロベリアのその言葉に掴んでいた腕の力を緩めて、ロベリアに寄りかかるグリシーヌ。
「…遅過ぎだ、馬鹿者」
「焦らした方が欲しくてたまらなくなるだろう?」
ニヤと笑うロベリア。
「どうしようもないな」
呆れたようにそう言ったグリシーヌにロベリアが返す。
「お互い様だろうが」
そして、グリシーヌの髪を自分の指に絡めるとキスを落として。
待ち焦がれてやまない夜が始まる─。

~あとがき~

折角4/1なので、「嘘」がお題。
これくらいの嘘をついてくれてもいいじゃないという話。
書き終えてみたら、イチャついてました(笑
別に約束しなくてもシャノワールで会えるけど、あえてわざわざ暗黙的にどちらかの部屋で、とか良いと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です