その日は恋人たちにとっては1年に何度かある特別な日の一つで。
当たり前のように会って、気持ちを確かめ合ったり、感謝を伝えたり、その形はいろいろあって。
それはこの二人の場合も例外ではなかった。
「今日はその、一般的には、そういう日らしいからな」
グリシーヌはそう前置きを付けると、綺麗にラッピングされたワインのボトルをロベリアに差し出した。
「随分、上等なワインじゃないか」
ヒューッと軽く口笛を吹いた後、それを受け取るロベリア。
そして。
「それで?」
「何だ?」
「プレゼントにはメッセージが付きものだろう?」
そうニヤと笑って。
「なっ…」
「解ってるクセに、とか言いたいんだろ?残念。解んないねぇ」
言わんとしていたことをロベリアに先に言われ、口をつぐむグリシーヌ。
やられているばかりではいけないと逆にロベリアに問い返す。
「そ、そういう貴様はどうなのだ」
「アタシか?決まってるじゃないか」
ロベリアはそれに動じることなく、グリシーヌの手を取りその指に口づけて。
「…アタシにはアンタしか居ないさ」
囁くようにそう言ったロベリアにグリシーヌの体温が上がる。
「次はアンタの番だぜ?」
自分でロベリアに問うてしまった手前、これ以上の誤魔化しはきかない。
グリシーヌは息を一つ吐くと、ロベリアにしか聞こえないような小さい声で言った。
「…私もそなただけを見ている…」
言ってから、ますます顔を紅く染めるグリシーヌ。
「じゃあ、イイ子にはプレゼントを選ばせてやるよ」
不敵に笑うとロベリアはジャケットから何かを取り出してみせた。
「アタシからのショコラとアタシとどっちが良い?」
「は?」
予想外のロベリアの質問に思わず聞き返す。
「アンタの欲しいのはどっちだ?」
ところが、やはり聞き間違いではなくて。
思案顔でグリシーヌを見つめるロベリア。
暫くして。
グリシーヌが呟くように言う。
「…両方だ」
言ってから、ロベリアをチラと見るグリシーヌ。
そのグリシーヌの答えに満足そうに笑った後。
「いいぜ。両方やるよ」
そう言って、ショコラの包みを開け一つ口に銜えるロベリア。
口を少し開くグリシーヌ。
ショコラとそれよりも甘い時間が二人を待ち受けて。
そして─。
ロベグリ、バレンタイン篇でした。
どうなんでしょう?(笑
何だかんだ言って、お互いメロメロだと良いと思います。