「あ、加山のお兄ちゃん!」
久し振りに帝劇を訪れた加山にアイリスが笑顔で駆け寄る。
加山の前まで来たところで何かを思い出したのか、一転して悔しそうな表情に変わった。
「?どうしたんだい?アイリス」
アイリスの頭を撫でながら問うた加山に複雑そうにアイリスが答える。
「間違えちゃった…」
「間違えた?何がかな?」
首を傾げて聞き返した加山からそっぽを向いて拗ねた口調でアイリスが言う。
「アイリス、もう子供じゃないからこんな風に走ってお出迎えするんじゃなかったのに…」
「そうなのかい?でも、俺はアイリスが元気そうで安心したなァ」
「でも、大人は頭撫でられたりしないもん…」
どうやら加山の自分に対する扱いも不服だったらしい。
今度は加山が苦笑しながらアイリスに頭を下げた。
「それはすまない。でも、俺はいつまでも”加山のお兄ちゃん”なんだな」
「そ、それはもう癖になっちゃってるんだもん!」
加山の指摘に紅く染まった頬を膨らませてアイリスがぎゅっと抱きつく。
「…おかえり。いっぱい心配したんだからね?」
呟くように言ったアイリスに目を細めると額にキスを落として加山が穏やかに笑って言った。
「ただいま。確かに君は子供じゃないね。…素敵な俺の恋人だ」
その言葉にアイリスは嬉しそうにはにかんだのだった。