ちりちり。
この痛みは何だろう。
「で!俺が丁度通りかかって荷物を持ってやったって訳よ」
「ほんで雅ちゃんがお礼言うてあんさんにこれを?」
「お礼なんて良いのによ!なぁ!」
そう言いながらも鼻の下を伸ばして雅ちゃんから貰ったというハンカチを見つめながらでれでれとしている昌平に妙に苛立つ。
「ほんま礼なんてええのになぁ。昌平の馬鹿力なんて幾らでも使てええもんなぁ」
口に出してから、気持ちの良い口調ではなかった事に気付いて昌平の方を見ると、昌平はむっとしている訳でも呆れている訳でもない様子で僕を見つめ返してきた。
「何?」
謝るのも何だか癪に障って態度を変えずに聞き返す。
「ヤキモチとか?」
「はぁ?!」
ヤキモチとか阿呆と違うだろうか。
どれだけ自意識過剰なんだろうかと思う。
「おめぇにだって機会はあるって!ま、ヒューゴたちがたまたま居なければ、の話だけどな」
バンと肩を叩かれ昌平に慰められる形になってしまった。
昌平にヤキモチを妬いたと思われたようだ。
「…せやね。普通はそう思うわなぁ…」
ぼそと昌平に聞こえないように呟いて自嘲気味に笑う。
「ん?何か言ったか?」
「何でもあらへんよ。僕も頑張らないかん思て」
「おう」
悔しい哉、これは昌平に図星を指されたようだ。
僕は妬いたのだ、昌平をこんな風に容易く舞い上がらせる事が出来る雅ちゃんに。
「ほんま敵わんわぁ…」
僕にこんな感情を沸かせる昌平に。
そもそも、そこで雅ちゃんに張り合おうとか全く意味が解らない。
そう思うとますます腹立たしくなって、またちりちりと胸が痛み出した。
この痛みともやもやは当面治まりそうにないだろう。
腹が立ったので昌平の胸元に紅い痕を残してやった─。