紐育。
とあるバーのカウンター席に並んで座るロベリア、昴、マリアの三人。
「…結局、誰もまともに遂行出来なかった訳だ」
肩を竦めながらそう言った昴にロベリアが反論する。
「アタシは違うだろう?アイツの望むものをあげられたんだ」
「…詭弁ね」
そのロベリアの言葉に呆れた様にマリアが返す。
「チッ…。アンタだって止まらなくなっちまったんだろうが」
「それに関しては否定しないわ。でも、そこで止めるなんて提示されていなかったもの」
「…それも詭弁だね、マリア。君ならそれ位汲めるだろう?」
控えめに正当性を主張するマリアに昴が指摘して、同意だと言わんばかりにニヤとロベリアが笑う。
「あえて、汲まない振りをしたって訳だろ?」
「あなたもね、ロベリア」
「…そうなると、まだ僕は遂行出来たという事になるな。少なくとも、違えてはいない」
扇子で口元を隠しそう言った昴に、失笑してロベリアが言う。
「アンタこそ詭弁じゃないか、昴」
起こす”だけ”で良かったんだぜ?と口角を上げてから、グラスの氷をカラと鳴らして。
「…止められる訳がないだろ。抑えろ?馬鹿言うな。抑えられる程度なら最初から手ぇ出してない」
吐き捨てる様に言ったロベリアの言葉に、賛同した様に笑みを浮かべる昴とマリア。
「…珍しくあなたと意見が合いそうね」
「…君はもう少し我慢を覚えるべきだとも思うけどね」
「ああん?」
三人で顔を見合わせて。
「本当に可愛い猫だわ。危なっかしくて」
「本当にどうしようもない猫だよ。迂闊でね」
「本当に苛めたくなる猫だね。純粋過ぎて」
そう口角を上げた後。
グラスを合わせ、一気に酒を飲み干した─。
「悔しいけど、今回の勝負はチャラだな」
「昴は言った。異議はないと」
「勝負は次回までお預けね」