「…何ともなってねぇぜ?」
口を開けた世海の口腔内を昌平が覗き込む。
「ほくの方は?(奥の方は?)」
そう言われ更に覗き込む昌平。
『何や歯が痛い気がする。昌平ちょい見て貰ってもええ?』
そう世海に頼まれそんな事となった。
頼まれた歯を見ながらも紅くちろちろ動く舌がどうしても目に留まる。
(くそっ。この間の話を思い出しちまうじゃねぇかっ。)
『舌ってエロいよな…』
就寝前に世海とした他愛ない会話の一つだった。
健全な男子としては至極ありふれた会話に当たるだろう。
(無防備に見えていい器官じゃないっつったのはおめぇだろっ、世海?!)
その時の世海の言葉が昌平の頭を過る。
何も今じゃなくて良いのにというタイミングでその事を思い出して昌平の体温は上昇し、一気に顔が熱くなっていく。
「どないしはった?顔が紅うなっとるよ?」
突然、赤面した昌平に首を傾げると、世海はそっと自分の両手で包む様に昌平の頬に手を当てた。
「な、何でい?!」
「ん、熱あるんかな思て」手を頬に当ててきたと思ったら、額をつけられて熱を測って来る世海の肩を軽く押して平気だと少し自分から離して。
「ね、熱なんかねぇから。ちぃとばかり部屋が暑いだけでぃっ」
「ほうか?」
何やら意味深な笑みを浮かべて世海が昌平を見つめる。
「?何だよ」
「僕はてっきり…」
そう言葉を濁す世海。
「てっきり、何でぃ?!」
「ええの?僕が言うても」
目を細めた世海に昌平の体温が再び上昇する。
「せ、世海っ。おめぇまさかっ?!」
「まさか、何どす?」
不敵に涼やかに微笑むと世海は昌平に顔を近付けて。
「なぁ、よう見えはった?無防備に見えたらあかんとこ」
そう昌平に舌を出して見せたのだった。