「あー、またそないな風にごろごろして。べべに皺が付くってせんど言うてるんに」
練習を終え、部屋に入るなり無造作にベッドに横になった昌平に呆れた様に世海が言う。
「またそれかよ。おめぇは俺の母ちゃんみてぇだ」
昌平が何とはなしに返したその言葉に世海の表情が複雑さを交えたものに変わる。
「…どなたはんがどなたはんのお母はんやて?」
声のトーンを抑え眉をひそめて言った世海の様子が数分前とは変わった事に何となく気付いて昌平が首を傾げる。
「何を怒ってるんでい?」
「は?別に怒ってへんし」
「怒ってんじゃねぇか」
「怒ってへん」
しばしその会話を繰り返し世海がポツリと言った。
「僕は昌平のお母はんやない…」
「んなの当たり前じゃねぇか。何を怒ってんだ」
半ば吐き捨てる様に言った世海の言葉をあっさりと否定する昌平。
「…例えだってお母はんとかかなんよ…」
「…あー。よく解んねぇけど悪かったよ。すまなかったな」
沈んだ表情の世海に申し訳なさそうに頭を下げてから。
世海の頭に手を伸ばして、くしゃと髪を撫でる。
「…もうええよ。僕もむきになってしもたし」
「…おめぇが何で嫌なのかが解んねぇけど、俺はおめぇが同室で良かったぜ?世海」
「おおきに。僕も昌平が同室で良かったわ」
(何で”お母はん”がかなんのか言える訳へんやろ…?)
思惑の違いの行方は何処か。