斧を振りかざし睨み付けてくるグリシーヌを思案顔で見つめ、ロベリアは口角を上げて言った。
「そんな物騒なもんを振り下ろすよりもっと効果的な方法があるぜ?」
目を細めたロベリアに見とれそうになりながら表情を崩すまいと眉をひそめてグリシーヌが聞き返す。
「ほう…その様な方法があるのか?」
「ああ。しかも、アンタにしか出来ないぜ?」
その含みのある言い方に訝しげにロベリアを見つめ返すグリシーヌ。
「くくっ、疑ってるのかい?」
グリシーヌのその視線に肩を揺らしてロベリアが言う。
「…では、その方法は何だ?」
「簡単さ。アンタの唇一つで参っちまうぜ?アタシは」
「は?!何を…」
「それとも…こんな簡単な方法が出来ないのか?アンタには」
挑発する様に鼻で笑ったロベリアにグリシーヌの表情が変わる。
「そ、その様な訳がなかろうっ…!」
「じゃあ、出来るんだね?」
「…っ…」
「貴族に二言は無いよな?」
そう言われて引き下がる訳に行かず、グリシーヌは息を一つ吐いた。
「め、目を閉じろ…」
「はーい」
ニヤと笑って目を閉じたロベリアの肩に手を置き、ごくりと唾を飲み込むグリシーヌ。
目を閉じているロベリアの睫毛の長さに思わず手を伸ばしそうになって引っ込める。
自分の行為に頬が熱くなってきたのが判ってその羞恥心を紛らす様に目を閉じてロベリアに口付けた。
そっと唇を離したグリシーヌに口角を上げて頬に手を伸ばすロベリア。
「…アンタにしては上出来だ。約束は守ってやるよ」
「…そ、その言葉違えるでないぞ」
朱に染まった頬を隠す様に顔を背けるグリシーヌ。
「ああ。…当分はね」
「は…?」
「またアタシを止めれば良い」
そう愉快そうにロベリアが笑った。