「プラトニックって知ってるか?」
ソファで本を読む昴に甘える様に首元に擦り寄るとサジータが唐突に言った。
「…プラトン的、純精神的の意だが?」
答えた昴に複雑な表情を見せるサジータ。
「ああ」
「…それが何だと言うんだい?」
如何にも物言いたげなサジータの様子に読書を中断して聞き返す昴。
「…足りると思うか?あんたは」
乱暴な投げ掛けにため息を吐いて肩を竦める昴。
「…君が一足飛び過ぎて理解に苦しむな」
「ああ、悪い!要するにさ、こんな風に二人で居てさ。こんなにあんたに触れられたくて堪らなくなっちまうし、あんたに触れたいのにそれを我慢出来る奴がいるのかって思ってさ」
「昴は言った。君基準で考えるものではない。触れなくとも満たされる人間だっていると」
「あんたはどうなんだ?昴。あんたは欲情しないのか?触れずに居られるのか?」
諫めた昴の顔をじっと見つめてサジータが問う。
そのサジータの顔を見つめ返すと目を細めてから昴はサジータのネクタイを掴んだ。
そして、自らの方に引き寄せて。
「…君が僕の箍を緩めたんだろう?サジータ」
その低い声色にぞくりと鳥肌が立つサジータ。
「…だったら?」
「…欲しがらない理由など存在しないと思わないか?これ程までに血の騒ぐ感覚などないと言うのに」
口角を上げた昴を嬉しそうに見つめるとサジータは唇を重ねた。