物の強請り方は嫌ってほど知ってても。
本当に欲しいものの強請り方に関しちゃ、てんで不器用なのだから笑っちまう。
「アンタが祝いたいんなら祝ってもいいんだぜ?但し、ヴィンテージのワインも一緒にね」
何か言いたそうに此方を見ているからついからかうように言った。
「…ワインだな、分かった」
そう頷いたアイツに思わず舌打ちする。
そうだ、コイツはヴィンテージのワインなんて容易く用意出来ちまうし、駆け引き関係なく何でも本気に取るし、詰まらないヤツなんだよ。
「何だ?ワインと申したのはそなただろう?何故、その様な顔をして居る?」
不機嫌さを前面に出したアタシにアイツが言う。
「いいや?何処かのお優しい貴族様が誕生日にワインを恵んで下さるって言うんで感動してるんだよ」
そう喉の奥で嗤って見せると、アイツの表情が一気に不快を感じているそれに変わる。
ああ、そうだ。その表情で良い。
「何が気に入らない?!」
怒りを抑えた声でアイツが言う。
「ハッ、何が?全部だ」
アイツを壁際に追いやり強引に唇を奪う。
「…っは…」
息が混じり合った頃に唇を離しアイツの顔を見ると、怒りと酸欠とで紅潮していて。
「…どういうつもりなのだ?!」
目に怒りを湛えて、コートの襟を掴んでくる。
そうだ、それでいい。
「ああん?」
口角を上げて見せてアイツの首筋に歯を立てる。
「!止めろ!」
先程からの不可解なアタシの行動に、困惑も交えた表情でアタシを退けようとアイツが手で押してくる。
それに構わずに抱き竦めてアイツを押さえつけるように首元に顔を埋めた。
「……止める訳ないだろ、馬鹿」
「なっ?!」
「…誕生日なんてな。どうでもいいんだよ。アンタさえ居れば」
「ロベ…リア…?」
アタシの唐突な告白に抵抗していたアイツの力が緩まる。
「…だから、何でもいちいちアタシの言う事を真に受けるなよ。アタシは…アンタだけでいいんだよ」
何でも聞こうとするから苛立っていた。
アタシたちはそんな関係じゃないだろう?
「…だったらそう言わぬか、馬鹿者…」
アタシの腕に自分の手を重ねてアイツが言う。
声もすっかり甘くなって心地好い。
「容易くそう言うアタシじゃないだろう?」
悪びれず鼻で嗤って見せると、フッと笑い返してきて。
「違いない」
「だろ?」
そう目を合わせて。
「…Joyeux anniversaire」
「それで充分だ」
キスを交わした。