「あんたの匂いは落ち着くな、昴」
昴の首元に鼻を寄せて嬉しそうにサジータが言う。
「…君も面白い事を言うね」
肩を竦めて返した昴に拗ねた様な表情を見せるサジータ。
「…何を拗ねている」
そんなサジータの顔を覗きこむ昴。
昴からしてみれば少々不可解な行動にサジータをじっと見る。
「べ、別に」
「…昴に同意して欲しかったのか?」
昴のその指摘にサジータの頬が熱くなる。
どうやら図星だったらしい。
「だ、だったら何だって言うんだい?!」
「…拗ねる前に人の話はきちんと聞くべきだな。ましてや君は弁護士だろう?サジータ」
呆れ顔の昴に小声でサジータが言う。
「…今は弁護士は関係ない」
「全く…。昴は昴の匂いで君が落ち着く事が疑問なのであって、昴が君の匂いで落ち着かないとは言っていない。むしろ、逆だ」
そう言うと。
懐から鉄扇を取り出し自らの口元を隠す昴。
「…昴!」
その言葉にサジータの表情が一気に輝く。
「さんきゅ、嬉しいよ。あんたの匂いは本当に落ち着くんだよ?」
満面の笑みで昴の頬にキスをしたサジータに今度は昴の頬が僅かに紅く染まる。
「…そんな事を言うのは君位だ。物好きな奴だな、君も」
「いいんだよ、それで。あたしはその方が嬉しい。昴を誰にも盗られたくないからね」
そう再び昴の首元に鼻を寄せたサジータの髪を撫でると昴は小さく微笑んだのだった。