「やっぱりこんな時間に迷惑だよね。止めよう!うん!」
先程から何度そう自分に言い聞かせてキャメラトロンのボタンを押すのを止めただろうか。
ジェミニは大きく溜息を吐くと、これも何度目になるか判らないが時計を見て時刻を確認した。
ベッドに横になってゴロゴロしながらぎゅっと目を閉じる。
「寝ちゃえばいいんだよ!」
だが、目を閉じると昴の姿が浮かんできてとても眠れそうにない。
先程からそれの繰り返しで、最初は何事かと一緒に起きていたラリーもすっかり呆れたのか今や我関せずと夢の中に行ってしまっている。
「…こんな時間なのに昴さんに会いたくなっちゃった。どうしよう…」
しかし、何度時計を見たところで深夜である事に変わりは無いし、こんな時間に会いに行くのもキャメラトロンに通信するのも非常識過ぎてどうする事も出来ない。
「…こんな時に限って時間過ぎるの遅いんだよね」
毛布を被ってベッドに丸まるジェミニ。
「…眠れないよ。目を閉じると昴さん出て来るし」
頭を振って再びキャメラトロンを手に取り見つめていると、不意に通信音が鳴って思わずキャメラトロンをベッドに落とした。
「び、ビックリした…」
慌てて拾い上げて通話ボタンを押すと、少しの間を置いて聞こえてくる声。
「…こんな時間に済まない」
「す、昴さん!?」
思い掛けなくて声が裏返る。
「…もう休んでいたのか?」
気遣う様な昴の声色に思わず首を振って返す。
「い、いいえ!起きてました!」
「…そうか。では、良かった…」
キャメラトロンの向こうだというのに昴の声色から表情が想像出来てジェミニから笑みが零れる。
「…昴は言った。今から非常識な事を言うが聞いてくれるか?と」
「?はい」
「…今から君に会いたいと言ったら君は呆れるだろうか」
昴のその言葉にジェミニの顔が一気に朱に染まる。
「…やはり呆れているのか?」
反応を返さなかったジェミニに昴が自嘲気味に言う。
「ち、違います!その、ボクも昴さんに会いたいと思ってたのでビックリして、えっと」
「…そうか」
スッと更に穏やかな声色に変わった昴に耳が熱くなるのを感じてジェミニの熱が上がる。
「…昴さんに会いたいです」
「…昴も君に会いたい。少し待っていては貰えるだろうか」
「はい!」
「…では」
「はい!後で」
切れる通信。
キャメラトロンを見つめて嬉しそうに笑うとジェミニは窓の外へと視線を向けた。