大方の書類仕事を終えて伸びをしているとスッと目の前に差し出されるティーセット。
紅茶の上品な薫りが大神の鼻腔を擽って、何とも肩の力が脱けて自然と笑顔になる気がする。
「…丁度、一息入れようと思ってたんだ。ありがとう、すみれ君」
そう笑った大神に照れ臭そうに頬を染めて、すみれが返す。
「中尉の疲れを取るには私の煎れたお茶が一番かと思いましたの」
「…うん。勿論、すみれ君の煎れてくれるお茶でも疲れは取れるんだけど」
妙に引っ掛かる言い方をした大神を訝しげに見つめるすみれ。
「何ですの?」
そんなすみれを思案顔で見つめると椅子を少し後ろに引いて。
「…おいで。すみれ君」
そう自分の膝の上を指す大神。
「すみれ君が此処に来てくれたら、もっと疲れが取れるんだけど」
「本気で…言ってますの?」
「うん。冗談でこんな事言わないよ」
微笑んで言った大神に赤面すると観念した様に大神の横に立って大神の膝の上に横向きに座るすみれ。
「こ、これで宜しいのでしょう?」
平静さを装っているが、緊張を隠しているのは見え見えで大神の口元が綻ぶ。
「…ありがとう。すみれ君のおかげで疲れが取れそうだよ」
腰を抱いてすみれの肩に顎を乗せると大神が言った。
「…このままもう少し抱き締めていて良いかな?」
熱の隠った声でそう囁いた大神にすみれは耳まで紅くして頷いた。