「バッカスの戯れ」サニラチェ R15(12/06月作成)


 仕事も兼ねてのパーティーの席にラチェットと共に出席した。
 政財界の顔の面々に大袈裟すぎるほどの社交辞令と作り笑いを繰り返し、ようやく席に戻ってみると何故だかラチェットは不機嫌で。
 どうしたのかと聞いてみると何でもないあなたには関係ないと突っぱねる。
 その態度の何処が何でもないのかと更に追及すると極上の作り笑いを見せた後、一気にシャンパンを飲み干して。
 アルコールが回り、すっかり機嫌が良くなったところで人目も憚らず抱きついてきたものだから、サニーサイドはラチェットを抱き上げて早々に宴席を引き上げた。
 パーティー会場であるホテルの最上階の部屋を借りて、部屋に入るとラチェットをそっとソファへと下ろすとチェイサーに用意されてあった水をグラスへと注いでラチェットに差し出す。
 「少し飲んだ方が良い。急に飲み過ぎだ」
 諫める様にそう言うとサニーサイドをジッと見つめてにっこりと笑ってラチェットが言った。
 「あなたが飲ませて?」
 いつものラチェットなら考えられない事だ。
 いつもならば、むしろサニーサイドが巫山戯てラチェットをからかって赤面して諫められるところだ。
 これでは立場が逆ではないかと、ため息を吐いてラチェットを見つめ返す。
 「……僕を誘っているのかい?」
 酔っ払い相手にまともに返したところで仕方がないというのに、そう言葉を返してみる。
 肩を竦めつつも少しだけ動揺している自分に気付いていて、何とも自分だけが素面なのが居たたまれなく思えてくる。
 「私から誘われるのはお嫌かしら?」
 その上、挑む様な視線を投げかけてくる始末だ。
 「…君は酔うとそうなるタイプだったかい?」
 過去の記憶を辿ってみても酒に弱い印象はあっても、このように酔っ払っているラチェットの記憶に辿り着かない。
 今までラチェットなりにセーブしていたという事だろう。
 「…僕の前で油断してくれるのは嬉しいけど、場所がよくなかったなぁ」
 「あら、恥をかいたって事?」
 その言い方が既にいつものラチェットではない。
 サニーサイドの表情に苦々しさが浮かぶ。
 「馬鹿を言っちゃいけない。あんな事をされたら気付かれてしまうだろう?」
 「気付かれる?何に?」
 「君の可愛さを周りにさ」
 真剣な表情でそう言い放ったサニーサイドにラチェットの頬が僅かに紅潮する。
 そして、それを見逃すサニーサイドではない。
 「…僕に、水を飲ませて欲しいと言ったね」
 ラチェットの隣に腰掛けるとグラスの水を口に含んでラチェットの頬に手を添えると、サニーサイドは唇を深く重ねてラチェットの喉に水を流し込んだ。
 腔内を確かめる様に頬の内側を舐めながら、舌を絡める。
 「…っ…ふ……サニー……っ…」
 僅かな呼吸の合間に漏れるラチェットの吐息に目を細めながら、キスを続けながら1つの確信を得るサニーサイド。
 唇を離すとラチェットの顔を覗き込んで、言った。
 「…ラチェット。君、酔ってないでしょ」
 そのサニーサイドの指摘にラチェットの顔が一気に紅く染まる。
 それはサニーサイドの指摘を肯定するに十分だと言えるだろう。
 「どうして酔った振りなんてしたんだい?」
 ラチェットの髪を撫でながらサニーサイドが言った。
 「………ない……と……思ったから…」
 俯き、消え入る様な声で言ったラチェットの額にキスをして優しく抱き締めるサニーサイド。
 「…僕は呆れてもいないし、怒ってもいないよ。だから、ちゃんと話してくれる?」
 「……こんな風にしないと…あなたに甘えられないと思ったから……」
 言ってから顔を隠す様にサニーサイドの肩に顔を埋めるラチェット。
 「君は本当にもう…どれだけ僕をつけ上がらせたいんだい?」
 ラチェットの手を取ると指先に口付けた後、ラチェットの顔を上げさせてサニーサイドが苦笑する。
 サニーサイドのその表情にラチェットが泣きそうな声で言う。
 「やっぱり呆れてるじゃない…」
 「…まさか。そういう風に見える?」
 「…ええ…」
 「それはね、必死で抑えてるからさ。こうして居ないと君を食べ尽くしてしまいそうなんだよ」
 そう口を少し開いてラチェットの唇を甘咬みする。
 その感触に思わず体をビクと震わせるラチェット。
 「君の可愛い誘惑に僕は嬉し過ぎて目眩がしそうなんだ、ラチェット」
 ああ…と大袈裟にため息を吐いてラチェットを抱き締めて、耳元でサニーサイドが囁く。
 「今日は君を帰せそうにない…。たくさんキスをさせて?」
 熱の隠ったその声に全身の熱が上がるのを感じながら赤面した顔で小さく頷いてラチェットが言う。
 「……たくさんキスを頂戴…?」
 必死にそう紡ぎ出してサニーサイドの頬にキスで返したラチェットにサニーサイドの口元が綻ぶ。
 「君が望むだけあげるよ、ラチェット」
 目を細めて微笑むとサニーサイドはラチェットの体をそっとソファへと沈めた─。

 

 「……どうして、酔った振りって判ったの?」
 サニーサイドに寄り添いながらラチェットが首を傾げる。
 演技には自信があったというのに見破られてしまった事が不思議だったのだ。
 「君の舌からアルコールの味が少ししかしなかったからね」
 ニヤと笑ってそう返したサニーサイドにラチェットは自分の迂闊さを恥じると共に反省したのだった。

 

~あとがき~

リクエストは「サニラチェで珍しくラチェットが酔っている話」でした。
酔った振りになってしまいました。すみません!
しかし、サニラチェを久し振りに書けて楽しかったです(*´∀`)
何かもうずっといちゃいちゃしていれば良いと。
大人のいちゃいちゃは楽しいですね(笑)

鶴見真さま、リクエストありがとうございました!

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