「毎日毎日、雨ばかりで嫌になってしまいますね」
マリアとともに朝食をとりながら、さくらが言った。
「そうね。いろいろと予定も狂ってしまうし」
紅茶に口をつけた後、マリアが答える。
「はい。また今日も中庭で早朝稽古出来ませんでしたし」
「それが、さくらの日課だものね」
早朝に中庭で一人、精神統一を兼ねて荒鷹を一振りするのだ。
それは見ている方もその緊張感に気が引き締められて、朝から背筋がピンと伸びる気がするから不思議だ。
「はい。仙台にいた頃からの習慣ですし、何より朝の澄んだ空気に包まれるあの瞬間が好きなんです」
「そうね。気持ちいいものね」
「ええ。でもこの雨だとそれも出来なくて…」
ふぅ、とため息をつくさくら。
「カンナみたいにはいかないものね」
カンナには天気などは関係ないらしく、雨が降っていても毎朝のジョギングを欠かさない。
身一つである分、濡れるのは問題にならないのかもしれない。
もっとも、カンナの場合はそれとは少し違うかもしれないが。
「カンナさんは特別ですよ」
「ふふっ、そうね。じっとしていたらカンナじゃないものね」
「はい」
そう二人で笑い合う。
「でもね、さくら。雨で憂鬱な時ほど、こうやって笑っていることが大切なのよ」
静かに微笑みながらマリアが言う。
「憂鬱な時ほど…ですか?」
マリアの言葉にさくらが問う。
「ええ、そうよ。憂鬱だからってため息ばかりついていると本当に憂鬱になってしまうでしょう?」
「えっと…、つまり笑っていれば自然と笑顔になるということですよね」
「そうよ。例え外が雨でも心の中まで雨になることはないじゃない?
それに笑顔には笑顔を呼ぶ力があると思うの。私たちの笑顔でお客様から笑顔が溢れるなら、それは少しでも帝都の人たちの支えになっているかもしれないもの」
「あたしたちの笑顔でお客様が笑顔になる…。それはとても嬉しいことですね!笑顔がある場所に幸せは生まれるんですものね!」
マリアの言葉にさくらが嬉しそうに笑いながら言った。
そのさくらに優しそうに頷くマリア。
そこには花のような二人の笑顔があった。
例エ雨降リデモ晴天ナリ。
~あとがき~
はい。今回のSSは、はる様との企画モノSSになります。
共通コンセプト「雨」、キーワード「花」「嬉しいこと」で、さくら&マリアのお話を書いてみよう企画。
ちなみにキャラ人選はアミダによります(笑)
はる様のSSは”貴重品保管室”に置かせて頂いてますので、ぜひぜひ堪能して下さいませ。
私の語彙のなさが如実になってしまいますが(苦笑)
さて、共通コンセプト、キーワード、キャラを使ってお話を書くという企画だったわけですが、私個人としては久々にカップリングSSじゃないものを書きました(笑)
基本的にカプSSの方が得意なのものですから( ̄ー ̄)ゞ
…というか、大神さんにメロメロ(爆)な誰かを書くのが好きなんですね。
…何か、あとがきになってませんね…。