所在なさげにシアターをウロウロしたと思ったら、楽屋近辺をチラチラ見たり。
とにかくいつにも増して落ち着きのない新次郎の行動を傍目に見ながらサジータが昴に言う。
「おい、あの坊やはあんたからのチョコを待ってるんじゃないか?昴」
「…だとしたら何だと言うんだい?」
「何だって…そりゃあ」
「僕から大河にチョコレートを渡せとでも?」
言わんとしている事を先回りして言った昴に頷くサジータ。
「それ位はしてやれよ。あんたたち、付き合ってんだろ?」
サジータのその問いに僅かに頬を染め扇子で口元を隠すと、立ち上がって。
「昴は言った。余計なお世話だと」
そうその場を立ち去った。
「変わっても素直じゃないのは相変わらずか…」
昴の立ち去った方を見つめながら肩を竦めるとサジータはコーヒーに口をつけた─。
一方、昴の姿を見つけ、嬉しそうに新次郎が駆け寄る。
「昴さん!」
駆け寄って来た新次郎を見るなり、その首に腕を絡めて自分の方に引き寄せる昴。
「え?あの昴さん?」
戸惑う新次郎を余所に唇を重ねる昴。
重ねた唇から甘い薫りが新次郎の鼻を掠め腔内にもその甘さが広がる。
絡められた昴の舌も甘くて、何だか妙に現実味がない。
唇を離すと新次郎の耳元に唇を寄せて昴が囁く。
「…僕からのチョコレートだよ、新次郎。気に入って貰えたかい…?」
新次郎はただ頷いた─。