「うーん…。酷い雨ですねぇ」
窓の外を見つめながら新次郎が苦笑する。
「この雨では当分止みそうにないだろう」
そう言って返した昴に時計をチラと見ながら新次郎が頷く。
「そうですよね」
「…何を気にしている?」
「いえ、結構遅くなってしまったので昴さんにご迷惑が掛かるなぁと…」
「迷惑?」
新次郎の言葉に扇子を開き口元を隠してから昴が言った。
「迷惑ならば既に君と共に居ない。むしろ、昴は…」
そう言ったところで言葉を止める昴。
「昴さん?」
「…雨など止まない方が良いと思っている」
言った方も言われた方も赤面して。
「…ありがとうございます」
「…ああ」
そう、そっと身を寄せた─。