「そなたからのショコラ、私も欲しいぞ…」
サジータに馬乗りになりながらサジータの顎に手を遣るグリシーヌ。
テーブルの上には空のワインボトルが一本が転がっている。
途中までは二人とも一定のペースで飲んでいた筈だ。
それがいつの間にかグリシーヌがペースアップしていて、気が付けばこの状況。
「グリちゃんも欲しいのか?アタシのチョコ」
ほろ酔いの為か押し倒されているというこの状況をよく理解していないのかグリシーヌをじっと見つめてサジータが問う。
「ああ。欲しいな」
サジータの唇を指でなぞるグリシーヌ。
「…そなたの唇とともにな」
目を細めて不敵に笑うその表情に漸く気付いて。
「え、ええと。普通に”いつもありがとう”じゃダメ?」
「それだけでは足りぬな」
サジータの首筋に軽く歯を立てた後、ネクタイを引き抜いてシャツのボタンを外す。
「ちょっ、グリちゃんっ。それはまずいってっ」
「まずい事などないだろう?今は私の事だけを考えろ」
制止の声に失笑するグリシーヌ。
(グリちゃん、すっかり酔っ払ってるし…!)
焦りながらもテーブルの上のグラスに目を留めるサジータ。
どうにか手を伸ばしてグラスを手に取る。
「…そうだね。今はグリちゃんの事だけ考えるよ」
「ほぅ…。なかなか物分かりが良いではないか。それがそなたの良いところだ。とても好ましく思うぞ」
機嫌良さそうにサジータの頬に手を添えるグリシーヌ。
「そう?」
苦笑しながら自らの口元にグラスを持っていくとワインを口に含み、グリシーヌを引き寄せる様に唇を重ねるサジータ。
サジータから流し込まれたワインがグリシーヌの喉を鳴らす。
更に舌を捕らえて吐く息を飲み込む様にキスを繰り返す。
サジータ自身も目眩を感じる程になったところで唇を離すと、繰り返されたキスでアルコールが回ったのかグリシーヌがサジータの方に倒れ込む様に抱きついた。
「…そなたも…やるではないか…」
満足そうに微笑むと目を閉じて。
グリシーヌが脱力して寝息を立てたのを確認し、大きく息を吐くサジータ。
「あっぶなかったー。すっかり忘れてたよ…」
首を触ると微かに残るグリシーヌの歯形。
「…昴にどう説明するかなぁ」
そう独り言ちて自らもアルコールが回っている事に苦笑する。
「ダメだ。眠くなってきた。何かグリちゃんあったかいし。一眠りしたら考えるか…」
そう目を閉じたと同時に眠りに落ちた─。