折角のクリスマスイヴだというのに仕事の残務処理に追われて本日も本日とて出勤の憂き目に遭ってしまった。
学校自体はつい一昨日、終業式を迎えたばかりで生徒の姿は校舎にはない。
夕方までにはどうにか終わらせるからと、宥めては来たものの電話越しの声は明らかに不機嫌で大神はため息を吐いた。
「へそ曲げちゃうと大変なんだよなぁ」
苦笑しながらそう独り言ちて再び端末に向かうとガラと不躾に扉が開いて、スタスタと自分の方へと近付いてくる足音。
背後まで来たところで、覚えのある薫りが大神の鼻腔をくすぐる。
まさかと上を見上げると、照れ臭いのか目を逸らして。
「すみれくん?!」
言った所でシーっと慌てた様に人差し指を唇に当てられた。
「ほ、他の先生がいらっしゃったらどうしますの?!」
小声で言ったすみれに微笑む大神。
「大丈夫だよ。日直の先生は俺に任せて帰ってしまったから俺しかいない」
「そ、それならそうと言って下さいまし!慌ててしまったではありませんか!」
ホッとした様に息を吐きながらすみれが言って、笑いながら大神が謝る。
「ごめんごめん。でも、来てくれたんだね」
「せ、先生があまりに遅いので迎えに来て差し上げただけですわ」
顔を背けながらそう言ったすみれの頬に手で触れて大神が言う。
「ありがとう。でも、もう少し待って貰っても良いかな」
「し、仕方ありませんわね」
そう言うものの少しガッカリした様子のすみれに、作業を急ピッチで進め端末を落とす大神。
すみれが来た途端に上がった作業スピードに苦笑しつつ立ち上がって帰り支度をする。
「お待たせ。すみれくんのお陰で早く終わったよ」
「そうなんですの?」
「ああ。俺も驚いたよ」
「でも、先生とこんな風に職員室で堂々とお話ししてるなんてドキドキしますわね」
所在なさげにそわそわするすみれを大神が思案顔で見つめる。
「そういえばそうだね。折角だし、キスとかしてみる?」
「はい?」
聞き返したすみれの唇を掠め取る様に奪う大神。
「確かに禁断って感じかもね」
「先生っ!」