「いいえ。でも、サジータさんは驚かれたのでは?」
「はは。実はちょっとだけね、グリちゃんがこうなったのは見た事があるんだ」
サジータからの意外な返事にむしろ花火の方が少し驚いて、更に問い返す。
「そうでしたか。…お二人で居る時にですか?」
寝てしまったグリシーヌを見つめながら、サジータが花火に言った。
「ああ。二人で飲んでいた時に少しね。…ロベリアは勿論知ってるんだよな?」
「はい。勿論、御存知ですよ」
グラスの中で揺れるワインを見つめながら花火が答える。
(知っていたのにあの様に…。ふふ、本当に面白い方ですね)
「そっか。だから、ロベリアはグリちゃんにあまり飲ませたがらないんだね」
「ええ。恐らくそうなのだと思います」
「でも、花火も知ってた訳だろ?なのに、今日はどうして止めなかったんだ?」
そう真っ直ぐに見つめて来るサジータの視線に首を傾げて微笑む花火。
(サジータさんはすっかり酔いが覚めてしまったようね)
「何故だと思われますか?」
「え。グリちゃんに飲ませてあげたかったから、とか?」
「それもありますね」
如何にも他意を含んだ花火の返事にサジータが問う。
「それも、って事は他もあるのか?」
「知りたいですか?」
どうにも勿体振って話す花火に何か思うところがあるのか息を小さく一つ吐くサジータ。
(さっきから、何か話が進まないんだよな…。この感じは何ていうか…ああ!そっか!)
「アンタって意外とそういうところがさ、」
そう何かを言い掛けたサジータの心情を読んでいるかの如く、花火がその言葉を継ぐ様に言った。
「…似ていますか?昴さんに」
当の本人に先に言われてしまい、苦笑してただ頷くサジータ。
「そういうところもね…。それで、話の続きなんだけどさ」
「そうですね。でも、その話をする前に此方にいらっしゃいませんか?其方はグリシーヌが横になってしまいましたし窮屈でしょうから」
座り直して自分の隣を空ける花火。
有無を言わさない様なその雰囲気に首を傾げながら「じゃあ、そうするよ」と立ち上がるとサジータは花火の隣に座った。
サジータのグラスにワインを注ぎながら、花火が話し始める。
「グリシーヌがああなってしまうのを解っていながら、どうして私が止めなかったか…で、よろしいんですよね?」
「…ああ」
「サジータさんがどうされるのか興味があったからです」
最後に丁寧に笑顔まで付けて花火が答える。
想定外の花火の答えに返す言葉を失うサジータ。
頭の中でそれがどういう事なのかを整理しようとするが、それが花火とうまく結びつかない。
「あー…ええと、つまり、それは?」
そんな言葉しか返せない自分にため息を吐き、ワインを飲みながら様子を窺う様に花火を見つめ返す。
「言葉のままですよ?」
「単純な興味か?」
「はい」
相変わらずのアルカイックスマイルを見せる花火の真意がどうにも解らない。
そんなところも確かに昴に似ている。
だが、花火の其れは似ていると済ませてしまうには妙な違和感を感じる。
昴の方が付き合いが長い所為があるかもしれないが、本音の本音がまだ隠されているのではないかとそんな風に感じるのだ。
(…この前の事もあるしな。アタシのペースを乱されっぱなしだ)
「私がサジータさんに興味を持ったらおかしいですか?」
考え込んでいるサジータの顔を下から覗き込んで見上げながら、花火が言った。
昴と同じ美しい黒髪が揺れ、同じく吸い込まれそうなその瞳に見つめられて赤面するサジータ。
「アンタの本意が解らないから困るんだよ」
その紅く染まった頬に指を伸ばし、花火が微笑む。
「本意など必要ない時もありますよ。ただ、そうですね。…昴さんとはあなたへの興味の意味が違うかもしれませんね」
頬に伸ばした指を唇へと移し輪郭をなぞる様に触れると、ますますサジータの顔が熱くなって。
(ふふ。やはり、サジータさんは可愛い方ですね)
グリシーヌによって開けられたシャツの襟元へと視線を移し、シャツの中へと指を滑らせる花火。
「お、おい。花火」
「先ほど、グリシーヌに聴かせたあなたの声を私にも聴かせて頂けますか?」
「さ、さっき、アンタも其処に居たじゃないかっ…」
「さぁ、そうでしたか?」
首を傾げるとサジータのシャツのボタンを更に外して、胸元に顔を近付けて。
「心配されなくても痕などは残しませんよ。昴さんに叱られてしまいますものね」
「そういう問題じゃな……ぃ…っ…ん…」
サジータの胸に顔を寄せて舌を這わせると同時に指で脇腹をなぞるとサジータの躰がビクと跳ね、甘い声が嬌がった。
「花火っ、止めろって…!」
「大きな声を出すとグリシーヌが起きてしまいますよ」
「わ、悪い」
そこで謝ってしまうのがサジータらしい。
思わず声に出して笑うと花火はサジータから体を離し、サジータのシャツのボタンを留めた。
「いいえ。私の方こそ興に乗り過ぎました」
「あまりアタシを困らせないでくれ。アンタを嫌いじゃないから本当にどうしていいか分からなくなるんだよ」
いつもと同じ花火の様子にホッとした様に姿勢を戻しながらサジータが言った。
「はい」
(そんなあなただからこそ、困らせたくなるのですけどね)
愉しげに笑みを浮かべると、花火はグラスに口を付けた─。
攻めグリ&黒花火×サジでした。(長い…)
ウキウキと書きましたけど、出てる人が一人多いと自然と文章量も増えますね(^_^;
思ったより時間掛かりました。
黒い花火も攻めグリも書いてて楽しいですけど、うちのサジータがry
基本、ヘタレなので何とも何ともですね!(笑)
甘んじて受けちゃう所がいろいろ駄目だと思います。
この組み合わせ、botや140SSでまたちょくちょく出て来ると思いますので、よろしければお付き合い下さいませ。
ちなみに「コンディショングリーン」は緊急警報を意味します。
サジータにとって、という事です(笑)