「愛してる愛してる愛してる」昴新昴(10/04月作成)

『たくさんの告白をあなたに』

リトルリップシアター。
稽古前。
楽屋扉をノックする新次郎。
そのコールに直ぐに中から返事があって、頭を下げながら中に足を踏み入れる。
「…失礼します。おはようございます、昴さん」
「…ああ。おはよう、新次郎」
中では昴が独りソファに座って、台本に目を通していた。
「お一人だったんですか」
「ああ。まだ誰も来ていない」
「…昴さん、あの」
まだ二人しかいない楽屋で昴の前に立つなり、深刻そうな表情の新次郎。
「…何だい?」
台本から目線を外さずに昴が答える。
「少しお話ししてもよろしいでしょうか?」
改まってそう言った新次郎に、台本を閉じる昴。
「昴は言った。構わないと」
「ありがとうございます」
「…それで、何だい?」
そう新次郎を見上げた昴をジッと見た後。
「すみません、失礼しますっ」
唐突に昴を抱き締める新次郎。
その新次郎を振り払う事もなく、表情を変える事もなく、昴が言う。
「…君はこれを”話”というのか?」
「いえ、違いますっ。ええと、そのっ」
弁解に慌てる新次郎に昴。
「落ち着け、大河新次郎」
「はい…」
小さく深呼吸する新次郎。
そして、言う。
「好きです、昴さん」
「………」
沈黙の昴。
「あの…」
恐る恐る昴を見て。
「…昴は言った。君は何がしたいのだと」
「すみません…」
昴を抱き締めていた腕を解いて、頭を垂れる。
「(大方、ラチェットに何か言われたのだろうが)君はどうしたかったのだと昴は聞いている」
「はい。…ぼくは昴さんにぼくの気持ちをお伝えしたかったんです」
「…一つ言っておこう。僕は君が何も言わないからといって揺らぐ事は無い」
「昴さん…」
昴のその言葉に感動した表情の新次郎。
「そもそも、君は分かり易すぎる」
「面目ないです…」
そう苦笑する新次郎を見て、不敵な笑みを浮かべる昴。
「…まぁ、たまには悪くないだろう」
独り言ちるようにそう言って。 新次郎を自分の方に引き寄せる。
「昴は言った。君の気持ちを聞かせて欲しいと」
「え?!」
突然置かれたこの状況に混乱しながら、言葉を頭に巡らせる新次郎。
「好きです、昴さん」
「君はそればかりだな」
呆れ顔でそう言うと、扇子の先を新次郎に突き付ける。
「残念だが、僕は案外欲張りらしい。その程度では足りない」
そう一蹴されて、どうにか言葉を探す新次郎。
「大好きです、昴さん」
「…そんなものかい?」
更なる言葉を探すが、どうにもうまく言えそうになかった。
「愛してます、昴さん」
それでも、何とか言葉を絞り出す。
それ以上の言葉は思いつかなかった。
「まだ足りないな」
ただ、それしか言えない自分に情けなさを覚えながらも、それ以上の言葉を紡ぎ出せないのだから仕方ない。
「愛してます愛してます愛してます」
昴の催促にただそれを繰り返す新次郎。
それでも、自分の思いの丈は全て込めて。
「…上出来だ、新次郎」
そんな新次郎を見つめると、笑みを浮かべる昴。
そして、新次郎の首に自分の両腕を回すと抱きつくように引き寄せた。
「わひゃあっ」
バランスを崩してソファに昴を押し倒した格好になる新次郎。
「すすすすみませんっ、昴さん」
「…謝る必要はない。僕がそうしたんだ」
慌てて起き上がろうとする新次郎を制しながら昴が返す。
「さて、その先は君の自由だ。どうする?大河新次郎」
「ええっ」
予想外の昴の言葉に迷った後、唾を飲み込んで。
覚悟を決めたのか静かに言う。
「…本当に昴さんの事ばかり考えてます」
そう昴の頬に手を遣る新次郎。
そんな新次郎の唇に人差し指を当てる昴。
「…充分だ」
「はい…」
それから、引き寄せられるように昴に口づけて─。

~あとがき~

昴新昴でした。
何だろう?とても久し振りな感じが( ̄∇ ̄;
今更ですが、新次郎より昴さんの方が新次郎を好きな気がします。
昴さんは襲い受け、或いは誘い受けだと信じて疑いません(笑

title by : Abandon恋人に囁く10のお題「愛してる愛してる愛してる」

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