ノエルの飾りに彩られた巴里の街を二人で歩く大神とメル。
ノエル休暇前の年内最終公演の後に納会を兼ねてシャノワールで行われるノエルパーティーでプレゼント交換をする事になり、プレゼント選びを手伝って欲しいと大神に頼まれて二人で出掛ける事となったからだ。
ノエル休暇を数日後に控えて街全体が浮き足立っている様に見える。
中でも目抜き通りであるシャンゼリゼ通りの賑わい振りと言ったらなかった。
ショーウィンドウに飾られた最新のファッションにうっとりと見入る者、カフェでノエル休暇の過ごし方について談義に花を咲かせる者、グランマガザンへと向かいながら大切な人へのプレゼントに思いを馳せる者…そういった皆の様々な想いがその場の賑わいを一層華やかで幸せなものにしていた。
その幸せに満ち溢れたその通りを些か緊張しつつ並んで歩きながら、ふと大神を見つめるとその顔はとても嬉しそうにその光景を眺めていて、見ているメルまで嬉しくなってしまい思わず笑みが零れる。
「ん?どうしたんだい?メルくん」
メルの視線に気付いたのか大神が首を傾げながら「俺の顔に何かついてる?」と顔を手で触りながら、メルに聞く。
「い、いえ。何でもないんです。すみません」
気付かれてしまった恥ずかしさからメルの顔が赤くなる。
「そう?」と言いながら聞き返した大神に「はい」と頷きながら、所在なさげに目を逸らすメル。
そのメルの様子にフッと笑みを零すと大神が言った。
「ああ、そうだ。折角だし、手繋ごうか」
立ち止まって手を差し出すと、メルの顔はますます赤くなって。
「せ、折角だから、ですか?」
「うん」
微笑んで頷いた大神の手にそっと指で触れるとギュッと手を握られた。
「…少し冷えてしまったかな」
両手でメルの手を包み込む様に暖める大神。
「…大神さんは温かいですね…」
「体温が高いのかもしれないね」
「そうなんですか?」
「ああ。メルくんと手を繋げて嬉しいから体温が上がったのかもしれない」
真顔でそう言った大神にどう言っていいか分からなくなって、困惑した顔で苦笑するメル。
そんなメルに吹き出す大神。
「じょ、冗談だったんですか?!」
「はは、ごめん。そんなに困るとは思ってなくて」
「またそうやって私を困らせて喜んでらっしゃるんですね」
「悪趣味ですよ」と大神を呆れた様な顔で見つめるメルに大神が弁明をする。
「喜んでいる訳じゃないよ。ただ、可愛いなぁと思ってさ」
「そういうのを喜んでいるって言うんです…っ」
すっかり耳まで紅くしてメルが「知りませんっ」と顔を逸らす。
「ごめん。でも、手を繋げて嬉しいのは本当だからさ」
「も、もういいですよ。それは」
恥ずかしいのか話をそれで止めようとするメルに「本当なのになぁ」と呟いて苦笑した後、大神が言った。
「まぁ、こうしてメルくんと出掛けられているし、いいか」
「そ、それであの辺りのお店とか良いと思うんですけど如何ですか?シーとよく行くんです」
大神の言葉に聞こえない振りをして、少し先のパッサージュを指差しながらメルが言う。
聞こえない振りをしている事に勿論気付きながらも、あえてそれを追及する事なく大神が頷く。
「ああ。任せるよ。どうも女性への贈り物ってよく分からなくてね」
「では、行きましょうか」
「ああ」
自然と手を繋ぎ直して歩き出す大神とメル。
”プレゼント選びはデートの口実”
─それは二人の暗黙の内に。
大メルでした。
何か普通尺で書くのは5ヶ月振りだったみたいです(^_^;
ちっとも、ノエルっぽくない話でしたが何となくいちゃいちゃさせたので満足です。
この感じがうちのサイトの通常営業ですね(笑)