『それが何よりの』加山×かえで (10/03月作成)


いつもの事だと言えば、いつもの事だが。
目の前には機嫌良さそうに満面の笑みをたたえる人。
「ねぇ、加山くん。聞いてる?」
その手には酒の並々と注がれたグラスを持って。
「はいはい。聞いてますよ、かえでさん」
慣れた様子で返事をする加山。
「本当にぃ?」
そう加山の顔を覗き込むかえで。
「はい」
笑顔でそう返す加山は何だかとても嬉しそうだ。
「ねえ、何でそんなにニコニコしてるの?」
グラスを早くも半分空にして、かえでが加山に疑問を投げる。
「知りたいですか?」
逆に質問で返した加山に更に質問して。
「内緒にするようなことなの?」
「俺は構いませんけど、言ったら折角の酔いが醒めてしまうかもしれませんよ?」
「ええ~?」
加山のその言葉にかえでは眉間に皺を寄せて真剣に悩んでいる。
その様子がどうにも可愛らしくて、加山の口端が更に綻ぶ。
「どうしますか?かえでさん」
「酔いが醒めるのは嫌だけど、気になるから…言って」
まだ迷っている表情でかえでが言う。
「分かりました。じゃあ、ちょっと失礼して」
頷いた後、おもむろに立ち上がる加山。
かえでの手からグラスを攫うと、そのまま顔を近付け掠め取るように唇を奪った。
「………」
突然の加山の行動に呆然としつつ、非難めいた表情で加山を見るかえで。
ところが加山といったらそれに動じることなく、
「理由、判りました?」
満面の笑みでそう返す。
「…何となく、ね」
少し悔しそうに答えるかえで。
「もうちょっと呑んで頂ければ、俺としても嬉しいんですけどね」
「そう言われて、呑むと思うの?」
先ほどの加山の行動に酔いも醒めて来たのか、かえでが呆れ顔で返す。
「はは。呑む訳ないですよね。でも、酔ったあなたは本当に無邪気で可愛らしいので、俺としてはもっと見ていたいんですけどね」
「加山くんっ」
恥ずかしさから顔を紅く染めるかえで。
「まだ酔ってますよね?」
思案顔でかえでを見つめて。
「え?」
「だって、ほら。またこんなに近付けました」
再びかえでに顔を近付ける。
だが、唇が触れるギリギリのところで離れて。
思わず、目を閉じてしまったかえでが静かに目を開けると目の前には満面の笑みの加山。
「期待、してましたか?」
その言葉で羞恥心からますます顔を紅くするかえで。
「何を…期待するって言うの?」
冷静さを装い、そう返すがそれも反撃にはならない。
「そうですね。こういう事とか」
かえでの頬に手を添える加山。
三度、顔を近付けて。
「もうその手には乗らないわよ?」
また同じだろうと動じない姿勢のかえで。
「そうですか?」
そう囁くように言ってから、かえでに口づける加山。
「!」
少しずつ進入する加山の舌にかえでの口が少しずつ開いて、間もなく吐息が混じり合って。
「……ん…っ……ふ…っ…」
名残惜しそうに唇を離すと悪びれた様子もなく、加山が言う。
「…すっかり酔いも醒めましたか?」
熱いキスの影響で加山の肩に顔を埋めながら、かえでが頷く。
「あなたは本当にこんな風に可愛らしくて危なっかしいので、こういう風に酔うのは俺の前だけにして下さいね?」
かえでの額にキスを落としながら加山が言った。
そんな加山にかえでがポツリと返す。
「…あなたの前の方が危険だわ」
その一言に思わず苦笑して。
「確かにそうですね。でも、酔い醒ましにはいつでも駆けつけますよ?」
「…覚えておきます」
小さく咳払いをして恥ずかしそうにそう返すかえで。
飲み過ぎ注意と心に留めて。
でも、たまに飲み過ぎてあげても良いかもなどともチラと心を過ぎる。
そんな二日酔い防止の方法。

~あとがき~

リクは甘い加山×かえででした。
加山的『呑み過ぎ』防止法(かえでさん限定)。
酔ったかえでさんを書いた事がなかったので、書いてみました。
もうちょっと加山に絡むはずだったんですが、気が付いたら攻守逆転してますね。
結局、いつもの感じになってしまいました( ̄∇ ̄;
ダメですね、加山がかえでさんを好き過ぎる…(笑
ええと。
糖度は足りてましたでしょうか?
楽しかったです!ありがとうございました!

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