『…キス、しようか』
そんな事をわざわざ確認するのは君に触れる切っ掛けが欲しいから。
そして、それは僕らの合図。
ただ君に触れるだけなのは嫌で。
そんな一言を添える。
『好きだよ』でも、
『愛してるよ』でもなく、
『キスしようか』の一言。
君が恥ずかしそうに頷いてくれるのを見る度、君も僕と同じ気持ちでいてくれているんだと嬉しくなる。
勿論、君が僕のことをどう想っているかなんて、そんな事は解りきっていても。
目の前の君の態度でそれを確かめたくて、僕はそれを今日も口にする。
「…ねぇ、ラチェット。…キス、しようか」
君は聞かなくてもいいのにって顔をして、
「…そうね」
って、一言。
そして、それが合図。
─そして、僕は君に引き寄せられるように口づけるのだ。
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「…そうね」
彼のその言葉にただそう頷くのは、彼がそれだけで解ってくれるから。
そして、それは私たちの合図。
彼に触れられることが嫌じゃない私に、いちいちそんな事を聞く彼に私なりの肯定の言葉。
『好き』でも、
『愛してる』でもなく、
ただそう頷く。
『解ってるくせに』って何度言っても私の口から聞きたがる彼。
恥ずかしくて、本当はそんな風に頷くのだって苦手で。
聞かなくたって私が頷くのは解ってるくせに。
そんなところが狡い。
でもそんな狡さも嫌じゃなくて。
「…キス、しようか」
私に触れようとする度、そう聞く彼。
「…そうね」
その度に私も頷いて。
そして、それが合図。
─そして、私は彼の甘い甘いキスを待つ。
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「…キス、しようか」
そうラチェットを見つめるサニーサイド。
「…そうね」
目を上げると静かにそう言った後、頷くラチェット。
メガネを外すとテーブルに置き、ラチェットの頬に手を遣った後、ラチェットに引き寄せられるようにその唇に口づける。
「…っ……ん…っ……」
サニーサイドのキスを待ちかねていたようにそれに応えるラチェット。
二人の吐息が混じり合った頃、ようやく唇を離すとラチェットを抱き締めて、サニーサイドが突然笑い出した。
「…は、ははっ」
訳が分からないのはラチェット。
「サニー?」
不可解そうな顔でサニーサイドを見る。
「いや。ごめん、ごめん。僕は本当に君の事になるとティーンになるなって思って」
「?」
「君があまりに可愛いものだから、僕もそうなってしまうのかもしれないね」
「馬鹿にしてる?」
「違うよ。僕がそれだけ君に夢中ってことかな」
そうウィンクしてみせるサニーを訝しげに見るラチェット。
「何?僕の事を疑ってる訳?」
「だって─」
言葉を濁した後、『あなたって、昔からモテていたし…』と拗ねたように付け加えた。
「ほら!それだよ!」
そんなラチェットにたまらないといった表情で天を仰ぐサニーサイド。
「君のその可愛さは罪だ!ああ、もう、すっかり君の虜さ!」
オーバー過ぎるくらいのサニーサイドの反応に今度はラチェットが吹き出す。
「…ふふっ」
「解ってくれたかい?」
ラチェットの顔を覗き込むようにサニーサイドが問う。
「今日のところはね」
悪戯っぽく笑ってそう返すラチェット。
「それは良かった」
その返事に満足そうに笑って。
再び、ラチェットに口づけるサニーサイド。
ある恋人同士のある日の幸せな光景─。
~あとがき~
リクはラブラブなサニラチェでした。
今回は三部構成にしてみました。
まぁ、結局お互い同じようなことを考えてるっていう(笑
サニーさんの大人コドモみたいな部分が出せていれば嬉しいです。
サニーさんはラチェに対してだけお馬鹿(いろいろ解らなくなっちゃうという意味で)になっちゃうと良いと思ってるので、そのような感じでいってみました。
サニーさんは書いてるこちらが楽しめる人だなぁとつくづく思いました(笑
ありがとうございました!!