「あー!!やってられるかよ?!」
不機嫌そうに楽屋のテーブルに突っ伏すロベリア。
「何だ。これしきで根を上げるとはそなたもだらしがないな」
そんなロベリアに勝ち誇ったようにグリシーヌが言う。
「どこが”これしき”だよ?!一日3回回しとかあり得ないだろ?!」
シャノワールは夜営業のみだろ?と不服そうにロベリアが言った。
どうやら本日の公演回数の事を言っているらしい。
「仕方がないであろう?グラン・マだって何か考えがあるのだ」
「大体、その中の1公演がお偉いさんの貸し切り公演だろ?どう考えても”接待”ってやつじゃないのか?」
「うむ…」
ロベリアの指摘に口をつぐむグリシーヌ。
「ほら、アンタだって納得してないんじゃないか」
「…グラン・マにも何か考えがあるのかもしれないと申したではないか」
どうにも言いにくそうにグリシーヌが言った。
「なるほどね。…なぁ、あと1公演バックレないか?」
「は?」
ロベリアの提案に思わず聞き返すグリシーヌ。
「アタシらなりの意思表示ってヤツさ」
そう口角を上げるロベリア。
「馬鹿な事を申すな!ほら」
ロベリアの提案に呆れたようにため息を吐くとグリシーヌは小さな箱をロベリアに差し出した。
「?何だよ」
「ショコラだ。疲れているからそういう事を考える。これで少し頭を冷やすが良い」
「アタシはそんなに疲れているように見えるかよ?」
「違うのか?」
ロベリアに言わせると見当違いなグリシーヌに大袈裟にため息を吐いて見せた後。
何を思いついたように含み笑いをして、ロベリアが言った。
「─じゃあ、正解だ。ただし、アタシの疲れはショコラなんかじゃとれないね」
「そうなのか?」
「ああ。…あるだろう?ショコラよりも甘いものがさ」
そう言われたもののグリシーヌには見当もつかない。
てっきり酒だと言われると思ったのだ。
「分からないのか?」
「そのようなものが本当にあるのか?」
思い当たる節がないと眉をひそめるグリシーヌ。
そんなグリシーヌの様子にニヤニヤしながら顔を近付けるロベリア。
「…アンタの事に決まってるだろう?」
そして、その耳元で低く囁くと、
「!?」
余りの事に絶句するグリシーヌの耳朶を甘噛みして、言った。
「─これ以上の甘いものは知らないんでね。覚悟しな」
その後の公演でサフィールが輝かんばかりの笑顔を披露したのは言うまでもない─。
title : Fortune Fate君を例える3題「砂糖菓子よりもふわふわ甘い」