「10月10日」コクリコ誕2011 (11/10月作成)


 10月10日。
 巴里。
 「Bon Anniversaire!!」
 歓喜の声がシャノワールの客席に響く。
 その声を一斉に浴びたのは、一番年少の少女。
 シー特製バースデイケーキのロウソクを一気に吹き消し、まだあどけないその顔を照れ臭そうに嬉しさを滲ませながらくしゃくしゃに崩している。
 「コクリコさん、おめでとうですぅ!」
 「コクリコさん、おめでとうございます」
 「うん!メル、シーありがとう!」
 「コクリコ、おめでとう!これ、私たちからです!!」
 そうエリカが差し出したのは両手に抱える程の大きな包み。
 「わぁ!何だかすごいねぇ!」
 感激の声を上げながらプレゼントを受け取るコクリコ。
 「開けて見て下さいよー」
 早くコクリコの反応が見たいのか、急かす様にエリカが言った。
 「うん!」
 ガサゴソと袋状に包まれたそれをワクワクしながら開けると、包まれていたのはコクリコが一抱えする大きさのライオンのぬいぐるみ。
 「わぁ!」
 ぬいぐるみを抱き上げ、抱き締めて頬を寄せるコクリコ。
 「フワフワだねぇ!」
 「喜んで頂けて良かったです」
 コクリコの嬉しそうな様子に安堵の息を漏らしながら花火が言った。
 「うん!すごく嬉しいよ」
 「何とそのライオンさんはですねぇ、エリカたちが作ったんですよっ」
 「そうなの?!」
 えっへんと胸を張って得意げに言ったエリカに呆れた様にロベリアが言う。
 「アンタとグリシーヌは戦力になってなかったじゃないか」
 そう言われて改めてぬいぐるみを見ると、時々縫い目がガタガタと不揃いになっている。
 きっと、エリカとグリシーヌが担当した箇所なのだろう。
 ロベリアの言葉に聞き捨てならないとグリシーヌが言い返す。
 「何だとっ?!そなたも殆ど花火に任せきりであったではないか!」
 「少なくとも、アンタよりは役に立ってるね」
 「くっ…言わせておけば…っ」
 ロベリアの挑発的な物言いにすっかり眉をひそめて戦斧を取り出さん勢いのグリシーヌを花火が宥める。
 「グリシーヌ、落ち着いて。コクリコさんのお誕生日なのよ?」
 「そ、そうであったな。すまぬ、花火」
 花火の至極もっともな言葉に苦笑しながら頷くグリシーヌ。
 「そうですよ!落ち着いて下さい、皆さん!エリカの為にケンカなんて哀しすぎます」
 「「アンタの(そなたの)為じゃない!!」」
 エリカの的外れな発言にロベリアとグリシーヌが同時に反応して。
 思わず、吹き出すコクリコ。
 「あははっ、もうっ、みんな相変わらずだなぁ!」
 とても嬉しそうに笑うその表情に皆の表情も穏やかになって。
 柔らかい空気が皆を包む。
 「ま、オメデト」
 ロベリアがコクリコの頭をポンと優しく触れれば。
 「そなたが喜んでくれて私も嬉しい」
 グリシーヌが頬に手を添える。
 「おめでとうございます」
 花火が静かに微笑んで。
 「コクリコにまた一年、神様のご加護がありますように!」
 エリカがギュッと抱き締める。
 「うん!みんな、本当にありがとう!ボクはすごくすごく幸せだよ!」
 顔を真っ赤にして、満面の笑みを湛えるとコクリコはぬいぐるみを大事そうに強く抱き締めた。
 ─そして。
 慌ただしい足音と共に降ってくる声。
 「良かった…間に合った」
 振り返ると、息を切らす大神の姿。
 「誕生日おめでとう、コクリコ」
 そう手にしていた花束を差し出す。
 「あり…がとう…」
 唐突な出来事に咄嗟に花束を受け取るコクリコ。
 ぬいぐるみと花束を抱えて呆然と立ち尽くす。
 「ったく、遅いんだよ。アンタは」
 「全くだ。間に合わないかと思ったぞ」
 「でも、間に合って良かったです」
 「いざとなったらエリカが大神さんの振りをしようかと思ってましたよー」
 安堵の息を漏らす花組に苦笑しながら大神が返す。
 「これでも、急いで帰って来たんだけどね」
 「相変わらず、ハラハラさせますねぇ。大神さんは」
 「もう、シーったら。間に合ったんだからいいでしょう?」
 大袈裟にため息を吐いたシーを諫める様にメルが言って。
 「メルくんとシーくんにも心配かけてすまないね」
 「それよりも、ほら」
 ロベリアにつつかれて、コクリコに目線を合わせる様にしゃがむ大神。
 「イチロー、明日帰って来るって言ってたよね。もしかして、ボクの為?」
 不安そうにそう言ったコクリコの頭を撫でながら大神が笑う。
 「元々、今日帰って来るつもりだったんだよ。間に合って良かった。驚いたかい?」
 「うん、ビックリした。でも、嬉しいよ。ありがとう!イチロー」
 そうはにかみながら言ったコクリコはとても幸せそうで。
 「あ!エリカ良い事思いついちゃったんですけど、大神さんも間に合った事ですし、みんなでもう一回おめでとうって言いませんか?」
 エリカの提案に皆が笑顔で頷く。
 「うむ。異論は無い」
 「それは良いですね」
 「…付き合ってやるよ」
 「勿論ですよぅ」
 「はい!」
 「じゃ、大神さん。合図お願いします」
 エリカにそう促されて大神が立ち上がって言う。
 「いいかい?せーの…」
 
 「「「「「「「Bon Anniversaire!!」」」」」」」

 再びそこに響く歓喜の声。
 大神も加わって更に賑やかさを増して。
 笑い声はいつまでも絶える事はないだろう─。

 

~あとがき~

コクリコ誕2011、イベントの配布ペーパー用に書いた物です。
一応、大コク前提となってます。
こういうお話もたまには。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です