「こう暑いと泳ぎにでも行きたくなるね」
手でヒラヒラと顔を扇ぎ、躰に纏わり付く様な暑さにうんざりとした顔をしながら大神が言った。
「…大神さんは泳ぐのがお好きですか?」
大神の言葉を受けてメルが問う。
「ん?まぁ、海軍出身だという事を抜きにしても好きかな。その口振りからするとメルくんは好きじゃないのかい?」
「好きじゃないと言うより、あまり得意じゃなくて」
苦笑しながら言ったメルに、大神が何かを思いついた様にポンと手を叩いた。
「じゃあさ。俺がメルくんに泳ぎを教えるよ」
「大神さんが、ですか?」
「ああ」
そう笑顔で頷いた大神を訝しげに見るメル。
そんなメルの視線に大神が言う。
「…何か言いたそうだね」
「大神さんこそ」
見つめ合う二人。
「…メルくんも俺を解ってきたねぇ」
苦笑しながら大神が観念すると、恥ずかしいのか少し頬を染めてメルが返した。
「大神さんが私を困らせる事ばかりされるからです」
「メルくんが可愛いから、つい」
悪びれる様子のない大神にため息を吐くメル。
「それで、先程は何を思われていたんですか?」
「メルくんの水着姿が見たいなぁとか」
大神がそう言った次の瞬間。
メルの顔が耳まで朱く染まる。
「や、やっぱり不純なんじゃないですか!」
そう顔を背けるメル。
「恋人の水着姿なんだから見たいと思って当然じゃないか」
しれっとそう言い放った後、メルの顔を覗き込む大神。
「それは置いておいてもメルくんと出かけたいんだ。俺とデートして貰えるかな」
「そんな風に言われたら断れる訳ないじゃないですか」
「メルくんならそう言ってくれると思ってた」
「もう狡いですよっ」
「それを許してくれるからさ」
飄々とそう宣う大神に赤面するばかりのメル。
「プール楽しみにしてるよ」
「考えておきます」
「ああ。頼むよ。それじゃ、そろそろ戻るよ」
そう自分の持ち場へと戻って行く大神を見つめながら、メルはシーに付き合って貰って水着を買いに行かなければとため息を吐いたのだった。
─つくづく、自分は大神に敵わないと思いながら。