「こう暑くちゃ仕事どころじゃないよ」
そう駄々を捏ねるサニーサイドに呆れ顔でラチェットが返す。
「あなたの場合は大抵がそうだわ」
「まぁ、そうだね」
あっさり肯定するサニーサイド。
立ち上がってラチェットの手を取る。
「だって、常に君の事を考えているんだから仕方ないじゃないか。でも、君はそれは理由にならないって言うし。だったら、別の理由を考えるしかないデショ?」
「だから、何だかんだと理由をつけて仕事をしないって言うの?」
「その通り!」
そう得意げにウィンクをして、ラチェットの指にキスを落とす。
「ああ、でも語弊があるね。仕事はちゃんとやってるつもりだよ?少なくとも、期日を過ぎた事はない筈だ」
サニーサイドの言う通りなのだ。
これだけ、サボっている様に見えてきっちり仕事をこなしている。
それならば、始めから真面目にやってくれれば苦労はないのにと思うが、それで素直に従うサニーサイドでない事もラチェットは知っている。
「…そうね。確かにあなたは仕事はちゃんとやっているわ。私の言い方にも語弊があったのかもしれない」
「でしょう?」
子供の様に得意げな顔を見せるサニーサイドに笑いかけた後。
ため息を吐いてラチェットが言った。
「じゃあ、どうして私がここに来ると決まって駄々を捏ねるのかしら?」
ラチェットのその問いに、今度はサニーサイドがため息を吐く。
「君を長居させる為に決まってるじゃないか」
「どういう事?」
「僕が駄々を捏ねれば僕に仕事をさせようと君はここに立ち止まるだろう?」
それが嬉しくてねと付け加えて、にんまりと笑ったサニーサイドにラチェットの頬が上気する。
「…ば、馬鹿じゃないの?」
「君を引き留める為ならば馬鹿にでも何でもなるさ。僕がそういう男だって知ってるデショ?」
ますます朱くなるラチェットの顔。
「ああ。でも、種明かしをしてしまったのは失敗だったかな。君に諫めて貰えなくなってしまうしね。ん?どうしたんだい?」
「…この期に及んで何を言えって言うのよ?」
火照る頬を両手で押さえながら、ラチェットが小声で返す。
「はは。ごめんねぇ。ところで、さっき言おうと思ってたんだけど今度の休みに何処かに避暑にでも行かない?」
サニーサイドのその誘いに照れ臭いのか気がなさそうにラチェットが答える。
「…そうね。考えておくわ」
「それじゃ、決まりだ。楽しみにしてるよ!…さて、仕事頑張っちゃおうかな!」
そう伸びをするサニーサイド。
本当に現金なサニーサイドに呆れつつも、密かに次の休みに思いを馳せてしまったりして自分でも少し浮き足立ち始めている事に気付くラチェット。
仕事が進むサニーサイドに仕事が手に着かないラチェット。
そんないつもと違う日常が訪れるのも時間の問題だ─。
暑中お見舞いなので8月いっぱい位までフリー配布ですとか言ってみます。
よろしければ、どうぞ(*´∇`*)