「いやぁ!あなたとこんな風に正月を過ごせるなんて俺ァ幸せだなぁ~~!」
かえでと杯を傾けつつ、加山が歓声を上げる。
「もう、相変わらず大袈裟ね」
呆れたようにそう言いながらも嬉しそうなかえで。
「いや、でも、あなたと二人だけでこんなにゆっくりと正月を迎えるのは初めてじゃないですか。しかも、此処が何処だと思ってるんですか?!紐育ですよ!紐育であなたとコタツで差し向かいなんですよ?!」
「そうよね」
加山の力説に苦笑しながら、かえでが頷く。
「そうですよ?!」
「はいはい」
子どもをあやすかの様なかえでの返事に不服そうな加山。
「かえでさん、俺のことタダの酔っ払いだと思ってます?」
「思ってないわ。…ちょっとだけしか」
「ちょっとでも思ってるんじゃないですか。もう心外だなぁ!」
『ああ、もう』と、大袈裟に天を仰ぐ加山。
その態度の何処が酔っ払ってないと断言出来るのだろうか。
「いいですか?かえでさん」
「なぁに?加山君」
「前々から言おうと思ってたんですけど、酔ったかえでさんを介抱するのは俺の役目なんですよ!」
ビシッと人差し指を突き立てる加山。
「あら、そうなの?」
「そうですよ!花組さんたちならともかくですね!大神の奴にだけは絶っっっ対に介抱されて欲しくないんですよ!」
「それは妬きもちだったりする?」
からかうようにそう言ったかえでに動じず、むしろ即答して。
「当たり前じゃないですか!誰が好き好んで他の男に介抱させますか?!」
あまりに堂々とそう言い放った加山に自分の質問を後悔するように頬を染めるかえで。
二の句が継げずに、誤魔化すように杯に口を付ける。
「ですから、呑まれるのも結構ですが程々にして下さい。でないと、俺が気が気じゃないです」
「わかりました」
「よろしい」
「もう。私、何で新年早々あなたに注意されてるのかしら?」
「それは決まってるじゃないですか。俺があなたを好き過ぎるからです」
そして、いつものように笑う加山。
「はぁ…。今年もあなたに振り回されそうだわ」
そうため息を吐いたかえでに加山が言う。
「それは、お互い様ですよ」
「ふふ」
「はは」
見つめ合って、笑顔が咲いて。
幸せを感じる。
「「今年もあなたが幸せでありますように」」