「隊長、どうぞ」
「ああ、ありがとう」
帝劇の楽屋で恒例の新年会。
空になっている大神の杯にマリアが酒を注ぐ。
一口、口を付けると膳の上に杯を置き徳利を手にする大神。
「マリアもどうだい?」
「では、いただきます」
大神の言葉に杯を両手に添えてマリアが言う。
「ああ」
酒を注ぐ大神を見つめるマリア。
「先ほどは、」
「うん?」
「何を考えてらっしゃったんですか?」
マリアのこの質問に徳利をおいた後、何かを思い出したかのようにフッと笑って前を見る。
「ああ。いや、すっかりこのお正月に慣れてしまったなと思ってね」
その大神の言葉で共に前を見るマリア。
花組の面々が皆、楽しそうに笑っている。
それはとても心地よい喧噪で。
「…そうですね。私もすっかりこうしてお正月を過ごすことに慣れてしまいました」
「守っていきたいと思うよなぁ…」
「はい」
呟くようにそう言った大神の言葉に強く頷くマリア。
そのマリアの肩を引き寄せて、大神が言う。
「もちろん、君の背中は俺以外に守らせる気がないけどね」
そんな大神にマリアの頬が紅く染まる。
「…ありがとうございます」
「はは、マリアも慣れないな」
マリアの肩から手を離すと戯けるように大神が言った。
「もう、隊長っ。からかわないで下さい」
これにますます顔を紅くするマリア。
「ごめんごめん。…でも、本気だからさ」
最後は真面目な顔でそう付け加えた大神に見とれて。
「…はい。頼りにしてます」
頷いて、そう微笑んで返す。
「ああ。それじゃ、改めて」
「はい」
大神の音頭で目を合わせて。
杯を軽く掲げる二人。
「「今年も宜しくお願いします」」