巴里ライブ・カウントダウン3!
「イチロー!」
市場を通り掛かった所で聞き覚えのある声に呼び止められ歩を止めるが、本人の姿が見当たらない。
何処にいるのだろうと辺りを見回していると、人混みをかき分けながらコクリコが大神の前に駆け出して来た。
「ハァハァ…ゴメンね。呼び止め、ちゃって。もしかして急いでた?」
呼吸を整えながらも、大神を気遣うコクリコのそんな態度に思わず笑みが零れる大神。
「いや、大丈夫だよ」
大神のその返事にホッとしたように息を一つ吐くコクリコ。
「それで、俺に何の用事なんだい?」
「あ、うん。えっとね」
頷いた後、大神をチラと見るコクリコ。
「ん?」
「もうすぐノエルじゃない。イチローは何か予定ある?」
頬を紅く染め、緊張した面持ちで大神を見る。
「特に予定はないよ」
「ホント?!」
「ああ」
「えっと、それじゃあさ!ボク、たくさん美味しいもの作るから一緒にご飯食べようよ!」
「それは楽しみだな。是非、そうさせて貰うよ」
大神のその返事にコクリコの顔が輝く。
「うん!」
「それじゃ、俺もコクリコに何かプレゼントを考えないとね」
「え?そんな、いいよ。ボクから誘ったんだし」
「そういう時間も楽しいんだよ。その代わり、美味しいもの期待してるよ」
遠慮がちなコクリコの髪を撫でると笑顔で大神が言った。
「うん!腕によりを掛けるよ!」
満面の笑みで頷いて、大神の肩に手を掛けるコクリコ。
そして、大神にそっと耳打ちをする。
「…あのね、イチロー。巴里ではノエルを家族と過ごすんだよ」
「そうか。じゃあ、俺とコクリコは家族だな」
「えへへ」
そう照れ臭そうに笑ったコクリコを優しい表情で見つめる大神。
今年のノエルは暖かい時間を過ごせそうだ─。