「皆さんはこれを目の前にしたら我慢出来ないというものはありますか?」
すっかり慣例になったシアターの屋上庭園でのお茶会でダイアナが突然そんな事を言い出した。
「どういう意味でだ?許せないという意味で?」
コーヒーを啜りながらサジータが問う。
「あ。そうですよね。そちらではなく逆の意味合いです」
「そういうことなら、あたしはニャ…」
何かを言いかけて途中ではたと止まるサジータ。
「にゃ?」
そんなサジータに首を傾げるダイアナ。
「…ああ、何でもない。気にしないでくれ。あたしは勿論、バウンサーを目の前にした時さ。遠くまでかっ飛ばしたい衝動に駆られるよ」
「ふふ。サジータさんらしいですね」
「はーい!ボクはねぇ!甘いモノが目の前にあった時!どんなにダイエット中でも負けちゃう自信があるよ!」
エッヘンとそう言い切ったジェミニにサジータが突っ込む。
「そりゃ、”自信”じゃないだろうが」
「えへへ。そうでした」
「リカはな!リカはな!うまいもんが目の前にあったらぜーんぶ食っちゃうぞ!がまんするくらいならノコ食うし!」
リカのこの発言を受けて危機感を感じたのかテーブルの下に隠れるノコ。
「あー。リカはそうだろうな」
「リカ、ノコは食べちゃ駄目ですよ」
「えー。だめか?ダイアナ」
「駄目です」
「ちぇっ~」
「そういうダイアナはどうなんだよ?」
先ほどから人の話を聞いてばかりのダイアナにサジータが問う。
「私はそうですね。メガ…」
「めが?何だよ?」
何かを言いかけて止めたダイアナに聞き返すサジータ。
笑顔でそれを一蹴してダイアナが言う。
「ふふ。気になさらないで下さい。私はずっと探していた本をふと見つけた時は、居ても立ってもいられないですね。どんなに忙しくて時間がなくても、つい手に取ってしまいます」
「ダイアナさんらしいや」
「ふふ。そうですか?昴さんはどうですか?」
ダイアナのその言葉で、今まで黙って皆の話を聞いていた昴に視線が集まる。
ティーカップを静かに置くと、昴が言った。
「昴は言った。僕は自分を律する事が出来る。だから、そのようなものはないと」
「本当かぁ?」
「僕は君と違って未熟じゃないのでね」
「未熟で悪かったなっ」
不穏な空気が流れ始めたところでダイアナが止める。
「そ、それも昴さんらしいじゃないですか」
「うん。確かにそうだよね」
ダイアナの言葉にジェミニも頷いて、サジータも決まり悪そうに「まぁな…」と小さく頷いた。
「すばるには弱点がないってことか?」
「うーん。そうなるのかなぁ?」
リカの質問に頭を捻るジェミニ。
そこに通り掛かるは新次郎。
「ああ。皆さん、こちらでしたか!」
「大河さん」
皆の視線が一気に新次郎に集中して。
瞬間。
意見が合致する。
「…でも、何に於いても…ですね」
ダイアナの言葉に頷く一同。
「だな」
「だね」
「ん?ん?」
先ほど何もないと言い切った昴も扇をパチンと鳴らした後、頷いた。
「…異論はない」
「結局、あたしら全員同じな訳だ」
「リカたち、同じなのか?」
「うん。仲良しだね」
「リカたち、仲良しー!」
「…仕方ないが、そういうことだ」
「ふふ。敵う訳ないですものね」
「どうしたんですか?皆さん。ぼくの顔に何か付いてます?」
五人にジッと見られて、居たたまれなくなったのか新次郎が言う。
「何でもないですよ。大河さんもお茶いかがですか?」
「あ。いただきます!」
そして、皆の輪の中に入る新次郎。
お茶会は更に華やかになりそうだ。
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