春。
大帝国劇場中庭。
都市の迷宮化という怪事件も解決して、今夜はこの場所でそれぞれの労を労ってのパーティと相成った。
三都揃ってのパーティという事で、とても華やいでいてとても賑やかな様子だ。
その様子を少し離れた所から穏やかな表情で見つめる大神。
「一郎叔父、こちらにおいででしたか」
パーティの賑やかな輪の中から出て来たのか大神を見つけて新次郎が言った。
「新次郎。楽しんでるか?」
「はい!」
「それは良かった」
「一郎叔父は皆さんの所に行かれないんですか?」
「後で行くよ。もう少しここで皆を見ていたいんだ」
「そうなんですか?」
大神の意図するところが解らないのか不思議そうな表情の新次郎。
「最初は帝都だけだった。次に巴里。そして、紐育。俺たちにはこんなに頼れる仲間がいる。それがどんなに心強い事か」
「はい」
「俺たちは戦う為に集まった。でも、それ以上の絆で結ばれている」
「はい。ぼくもそう思います」
大神の言葉に大きく頷く新次郎。
「華撃団は都市を守り、人々を守る為に在る。そして、俺たち隊長はここに居る皆の笑顔を守る為に在るんだ」
「一郎叔父…」
「だから、戦いの度にいつものやつをしながら、『ああ、今日も皆の笑顔を守れたんだ』と胸を撫で下ろすんだ」
それは幼い頃から尊敬する叔父の初めて聞く本音かもしれなかった。
「ぼくたちは皆さんの笑顔を守って行かなくちゃなんですね」
「そうだ。だって、それが俺たち隊長の誇りだからな」
いつもの精悍な笑顔で大神が言った。
「皆さんの笑顔を守る事がぼくたちの誇り…」
大神の言葉を胸に刻みつけるように呟く新次郎。
「ああ。皆を見てみろよ、新次郎。笑顔が咲いているだろう?俺はその事が嬉しくて仕方ないんだ。この笑顔を守れた。それが俺たちの誇りだ」
本当に嬉しそうに満面の笑みで大神が言った。
「はい!一郎叔父!ぼくも誇りに思います!」
力強く頷く新次郎。
「よし!新次郎、今夜は飲むぞ!」
「はい!」
手にしたグラスを掲げる大神と新次郎。
宴はますます賑やかになりそうだ。
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