昴さんは一人で居るのが好きだ。
その事は分かっていたし、解っているつもりだった。
二人で居る時も、昴さんはぼくの話を聞いてばかりで自分の話をあまりしない。
ぼくは昴さんに退屈な思いをさせてしまっているんじゃないだろうか。
それどころか、一人で居たい昴さんの邪魔をしているんじゃないだろうか。
それでも、ぼくは昴さんと居たいんだ。
それはぼくの我が儘なのかもしれないけど。
「…どうしたんだい?新次郎」
思わずため息をついたぼくに昴さんが言った。
「な、何でもないです」
「昴は言った。僕に嘘をつくのか、と」
「え?」
「何でもないというのなら、そんな顔はしないだろう」
「すみません…」
「…君が話したくないと言うのならそれでもいい。ただし、それならそんな顔はするな」
俯いたぼくを諭すように昴さんが言う。
隠し事をしたい訳じゃないのにぼくは何をしてるんだろう。
「あの、違うんです」
「何がだい?」
「えぇと、その、昴さんぼくと居ると退屈かもしれなくて。でも、ぼくは昴さんと居たくて…」
何だか支離滅裂だよーー。
ああっ、ぼくは何を言ってるんだ。
「とにかく、昴さんの隣に居させて欲しいんです」
チラと昴さんを見る。
「呆れたやつだな、君は」
扇子をパチと鳴らす昴さん。
ホント、その通りだ。
「僕がいつ退屈だなんて言った?大河新次郎」
「でも…」
「僕は退屈な人間とわざわざこんな風に過ごしたりするほどお人好じゃない。僕なりに君との時間を楽しんでいたつもりだったけど、どうやら君にはそれが伝わっていなかったようだね」
「昴さん…」
「改めて言うような事じゃないから黙っていたが、君には言葉が必要なようだね」
そう言った後。
昴さんはぼくの耳元で囁くように言った。
「…僕を君の隣に居させてくれるかい?新次郎…」
もちろん、ぼくは大きく頷いたのだった─。
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