「ぼくたちの事を皆に言おうと思うんです」
「え?」
新次郎の突然の提案に思わず聞き返すラチェット。
「駄目ですか?」
「皆に言うというのは、つまり…」
「はい。ぼくとラチェットさんがお付き合いをしてる事です」
「…やっぱり言わなきゃ駄目かしら」
改めて”お付き合い”などと言われると妙に照れ臭くて、ラチェットの頬が紅く染まっていく。
それに、既に周知だとも思われて。
「皆、解ってくれてると思うわ」
「…ラチェットさんは、お嫌ですか?」
どうにも乗り気ではないラチェットに不安そうに新次郎が問う。
「嫌ではないわ。誤解しないでね?嫌ではないのだけれど、恥ずかしいのよ」
言った後、更に赤面して。
「その、そういう事ってした事なくて、どういう風にしたら良いか分からなくて」
しどろもどろに説明するラチェット。
そんなラチェットを愛しそうに見つめる新次郎。
「だから、もう少し─心の準備が出来るまで待って貰っても良い?」
申し訳なさそうにチラと新次郎を見て、ラチェットが言う。
「もちろんです」
そう微笑んで頷いた新次郎にホッとしたように小さく息を吐くラチェット。
「ありがとう。本当にごめんなさい」
「いいえ。ぼくもあせり過ぎました。早く皆に自慢したくて」
「自慢?」
「はい。ぼくの恋人はこんなに可愛らしいひとなんだって」
満面の笑みの新次郎。
あまりの不意打ちにラチェットの体温が一気に上昇する。
これ以上はどんな顔をして良いか分からなくて、新次郎に背を向けて返事をする。
「そ、そう」
「はい」
耳まで紅く染めて新次郎を直視出来ないでいるラチェットの背中を見つめながら幸せそうな新次郎。
いつの間にやら少し大人になった新次郎に振り回されているラチェット。
恋人たちは日々変化し、進歩する─。
title by: Fortune Fateみっつの約束「こころの準備ができるまでまって」