ある冬の日の昼下がり。
カフェの前で難しい顔をして立つ大神とシー。
財布を手に何やらひそひそと話している。
「─アン、ドゥ、トロワ…」
そう何かを数えるシーの手には硬貨が数枚乗っている。
「80サンチームですね。─それで、大神さんは?」
シーにそう促され財布の中身を確かめる大神。
「俺もそんなにはないよ?ええと…すまない。思っていたより無かった」
「いくらですかぁ?」
「…1.5フラン」
「ええっ?!それじゃ、カフェに寄れないじゃないですか!?」
不服そうなシーに対して面目なさそうな大神。
「本当にすまない…。給料日は明日だし、今月はちょっと苦しくて」
「もうっ、無駄遣いばかりしてるからですよぅ!」
その要因の一つにシーが大神にブロマイドを勧めて大神がついそれを買ってしまうことも勿論含まれているのだが、二人とも敢えてそこに突っ込む気はないらしい。
「まぁ、使いの途中なんだしシャノワールに戻ろう」
「ええー?!」
大神のその意見に更に不服そうなシー。
「折角、二人なのにですかぁ?!あたしとしてはもうちょっとこの時間を堪能したいですよぅ。大体、最近忙し過ぎですよっ」
お休みがないじゃないですかと膨れるシーの言葉に苦笑する大神。
確かにシーの言う通りなのだ。
華撃団の会議だなんだと飛び回っていて、ゆっくり腰を落ち着けられていない。
「─分かった。じゃあ、ちょっと寄って行こうか」
「え、でも…」
寄りたいと強く言ってはいるものの現実問題として持ち合わせが少ないのだ。
オープンカフェの席に着いた大神に付いて、向かい合わせに座ったもののどうすればよいのだろう。
「俺はいいから、シーくんの好きなものを頼んでよ。まぁ、予算がちょっとしかないけど…」
苦笑しながら大神が言って、シーは少しだけ遠慮がちにギャルソンにショコラ(ホットココア)を頼んだ。
そして、大神に頭を下げる。
「…ごめんなさい!」
「ん?何だい?」
「大神さんがお仕事で忙しいっていうのは分かってるんですけど、つい」
「はは。いいよ。俺もシーくんと会えている事だけで満足してしまっていたからね」
確かに君の言う通りだったと微笑む大神に見とれるシー。
シーがどんなに我が儘を言っても、大神はこの笑顔で全て包み込んでしまうのだ。
「もう大神さんには敵いませんねぇ」
そう独り言ちるように言ったシーの口調は嬉しそうだ。
「え?」
「何でもないですぅ。ちょっとの時間ですけど、デート楽しみましょうね」
「ああ」
シーの言葉に頷く大神。
間もなくギャルソンが運んでくるショコラを二人で分け合って、他愛のない話に盛り上がる事だろう。
二人で分け合うショコラが却って距離を縮めて、結果的にはこれで良かったと二人で笑って。
懐は少し寂しいけれど、過ごす時間はとても暖くて幸せで結局のところ二人で居られるならば何でも良いという例─。
初カプ、大神×シーでした。
シーのお別れイベントで妹と一緒に泣いた(実話)割には、書いた事がなかった大神×シーですが、ようやく書けました。
私がメルを好き過ぎて(笑)、大神さんとシーが付き合ってる画を想像するのに時間が掛かりましたが、書いていて楽しかったです。
メルもシーも先のライブでは他人事のように大神さんを見てましたが、あなたたちも大神さんを好きなのよ?!と思いました(笑
花組さんがやきもきしちゃうくらい、もうちょっと大神さんにベタベタして欲しい!(*´∇`*)
ライブではみかさん可愛過ぎだ、もう。
ちなみに当時のレートにして1フランは2~300円くらいだそうです。(エンターブレイン刊サクラ3ファイナルガイドより)
大神さん、ギリギリ過ぎ(爆
と、いうところで。
シー、お誕生日おめでとう。