「ロベリアさんっ」
滅多に語気を強めない花火が珍しく声に表情を浮かばせて、自室で寝ていたロベリアの前に立った。
何事かと目を開けるロベリア。
「…何だよ?」
「…って、言ったじゃないですか?!」
「ああん?」
肝心の言葉を濁した花火をロベリアが聞き返す。
「その…、此方です」
そうブラウスの襟を少し開け、鎖骨の少し下を見せる花火。
そこにはロベリアがつけたと思われる朱い痕が残っていた。
「ああ。それか」
それが何だ?と言わんばかりのロベリアに花火が非難の表情で言う。
「目立つ処にはやめて下さいと申し上げた筈です」
「何だよ?其処だって大して目立たないだろう?アンタの衣装だったら隠れる場所じゃないか。それとも、何か?」
ようやく起き上がると胡座をかき、花火の腕を掴んで自分の方に引き寄せるロベリア。
「ソコを見せるようなコトがあったのか?」
「…ロベリアさんの思われてるようなことはないですよ」
そう否定する花火にその言葉を待っていたとばかりに口角を上げてロベリアが返す。
「アタシが何を思ってるって?言ってみろよ、花火」
「ですから─」
そう言ってから、頬を染める花火。
その花火の様子に低く笑うロベリア。
「くくっ。なぁ、花火?何を考えた?」
花火はそんなロベリアのペースに呑まれまいとロベリアを見つめ返して改めて言った。
「そうではなくて。今は私の話を聞いて下さい」
「だから、さっきから聞いてやってるじゃないか。要はソレを誰かに見られちまったんだろう?そうだな。例えば、グリシーヌの奴とか」
「気付いていたのですか」
「アンタの口振りから察すればそんなところだろうと思ってね。で、何で見られちまったのかをアタシは聞いてるんだ」
さっきからそう言ってるじゃないかとつまらなさそうに欠伸をしながらロベリアが言った。
「楽屋で稽古着から着替えている時です。赤くなっていると指摘されて」
「へぇ。で、アンタは何て答えたんだ?」
「…その、虫に刺されてしまったと」
「くくっ。アタシは”虫”かよ?」
「すみません…」
笑うロベリアとは対照的に俯く花火。
「いや。アイツからしてみればアタシはアンタに付きまとっている悪い虫だろうさ」
そう言い放って、むしろ悪びれないロベリアにため息を吐いてから花火が言った。
「そう思われるのでしたら、自重して下さい」
「自重だって?誰に言ってるんだ」
「ロベリアさんっ」
全く反省の色がないロベリアに困惑しながらも諫めるように言う花火。
それで、効果があるようならとっくに聞き分けてくれていると半ば諦めながら。
「そんなものするかよ。だって、わざわざ見せびらかしてやってるんだからね」
「やはり、故意だったのですね。本当にあなたは…」
呆れ顔でそう言った花火の頬に手を遣ると、ロベリアは先ほど少し開けられた花火のブラウスの中に指を滑らせ、その朱い痕に触れた。
「誰にも手出しはさせない。アンタに触れていいのはアタシだけだ」
「はい。私だってそう思っています。ですから、」
このようなことをなさらなくても大丈夫ですと続けようとした花火の口をロベリアの唇が塞ぐ。
「…ん…っ……」
深い口づけに力の脱けた花火の体を支えながら、ブラウスの釦を外すロベリア。
そして唇を離すと、再びその痕に唇を寄せた。
「…あ……っ……」
覚えのある甘美な痛みに思わず花火の声が嬌がる。
ロベリアによって更に朱みを増したその痕は花火の白い肌において更なる存在感を主張している。
顔を上げてそれを見つめながら、指でそこを辿ると勝ち誇ったようにロベリアが言った。
「花火、アンタはもっと自覚しな。アタシはそんなに気が長くないんだ。アンタが他のヤツと一緒にいるなんてジョーク、ちっとも面白くないんだよ」
そう言ったロベリアに諦めたように小さく頭を振ると、花火が苦笑しながら返す。
「…仕方ないですね」
そんな花火に満足そうに笑った後、ロベリアは再びブラウスの中へ手を滑らせた─。
と、言うわけで衝動的に書き始めたロベ花も気が付けば3本目です(^ー^;
割とフィリップ絡みの話が続いたので、今回はただいちゃいちゃさせてみました(笑
カプ定番話ですね。
とりあえず、裏部屋行きは免れました。あくまでも微エロです(爆
title by: TOY甘々20題(その2)「キスマーク」