「ねぇ、ラチェット。ちょっと出ない?」
支配人室での作業中、サニーが突然そんなことを言い出した。
「はぁ?今、仕事中じゃない」
「そうなんだけどさ。だって、窓の外に広がるあの空を見てよ!いかにも外に出ておいでって言ってるように見えない?」
言われて窓の外を見ると確かに雲一つ無い眩しいくらいの青い空。
そんな事言って、仕事をサボる気ね。
「……見えない事もないけど。もう、サニーが仕事したくないだけなんじゃない」
ここで安易に同意してはサニーを甘やかすことになる。
私は心を鬼にしてそうサニーに返した。
「違うよーー。空が呼んでるんだってば」
私の言葉にサニーが反論する。
その態度のどこにサボる気がないって言うのよ?!
「空が?」
「そう」
「誰を?」
「僕たち」
「さ、仕事しましょう」
サボらせないんだから。
どれだけ仕事が溜まってると思ってるの?
「ラチェットーーー」
「もう。何、情けない声出してるのよ」
「だって、ラチェット。僕がただ仕事サボりたいだけだと思ってるでしょ」
「え?違うの?」
他に何があるって言うの。
「僕はラチェットとなら仕事だって楽しいよ!」
…………。
面と向かって何を言い出すと思ったら。
「…ありがとうゴザイマス」
「いえいえ。って、そうじゃなくて外に出ようってことだよ」
「諦めが悪いんだから」
「だってこんなに天気がいいからさ。ラチェットと散歩とかしたくなっちゃったんだよ」
サニーが満面の笑顔で言った。
何で妙に説得力があるんだろう。
それは私だってこんなに天気が良いなら、散歩したら気持ちいいだろうなとは思ったけれども。
「天気がいいからこそ、ラチェットと外を歩きたいんだよね」
”私と”いう部分を強調するようにサニーが続けた。
「……調子いいんだから、もう」
そう言われて悪い気はしないんだけど簡単に頷く私じゃないわ。…多分。
「だって、ホントのことだからさ。でもさ、勿体ないと思うでしょ?ラチェットも」
サニーにそう言われると、ここにずっといるのが本当に勿体ないことのような気がしてきて、私も不思議と外に出たくなってしまう。
「まぁ、ね…」
「じゃ、行こ?」
そう言って、サニーが差し出した手に私の手を重ねる。
「もう、しょうがないわね。今回だけよ?」
「はいはい」
この手を取ると何でだか『まぁ、いいか』なんて思ってしまう。
私も甘くなったのかも…。
でも、まぁ良いことにして。
たまにはいいわよね。こういうのも。
ちょっとだけオフな時間を頂きます。
ではでは…。