『どちらにしよう…』
二冊の本を目の前にしてメル・レゾンは心底困っていた。
目当ての物を決めていざ書店に来てみると、ずっと探していた本が入荷していたのだ。
二冊とも買ってしまえば良いのだが、一冊一冊をじっくり読みたい。
そうすると、どちらか一冊を読むのがいつになるか判らない。
どちらか一冊をまた別の機会にすれば良いのだが、どちらとも同じくらい読みたい故に二冊のうちどちらかを選ぶことなど出来ない。
自分の優柔不断さに呆れなからメルはため息を吐いた。
「こっちは俺が買うよ」
その棚の前で立ち尽くしているメルの後ろから手が伸びてきて、一冊の本を手に取った。
その声で我に返るメル。
そうだ。
買い物のついでに大神に書店に付き合って貰ったのだ。
「丁度、本を読みたかったしね」
数十分もそこで難しい顔をして居た所為で、どうやら大神に見透かされていたようだ。
メルは気恥ずかしさで赤面すると小さく頷いた。