「ん?世海、何か落ちたぜ?」
世海の着物の袂から落ちた小袋を拾い上げて昌平が言った。
「あ、おおきに」
世海はそれを受け取ると大事そうに再び袂へとしまった。
そんな世海を不思議そうな顔でじっと見つめる昌平。
「?何やの」
「随分と大事そうにしてんなって思っただけでぃ。お守りか何かか?」
「そ、そんなとこどす」
普通に聞いただけなのに何故か世海の顔に赤みが差した。
こういう反応の時の返しと言ったら決まっている。
例に漏れず妙に訳知り顔をして昌平が言った。
「…あー。あれだろ?初恋のひとに貰ったもんってやつだろ?聞いて悪かったな」
ポンと世海の肩を叩いて笑みを浮かべる昌平。
対し、呆然とする世海。
「は?」
「何でい。違うのか?」
聞き返されてハッとなって慌てて頷いてみせる。
「そ、そんなようなもんどす」
「だろ?」
「へぇ」
「落とさねぇようにな」
世海は思いの外、大人な対応を見せた昌平に思わず聞いた。
「からかわへんの?」
「からかわねぇよ」
「何で?」
「何でって。からかって欲しいのか?」
「まさか」
「訳わかんねぇな」
「や。昌平が存外に大人やったから驚いてしもて」
はぁ…と小首を傾げながら自分を見つめてくる世海に決まり悪そうに昌平が返す。
「そんなにガキじゃねぇ」
「そやね。僕の認識改めますわ」
「おう、頼むわ。…で、ホントはそれ何なんだ?」
聞かないと言った後に直ぐこれだ。
しかし、この方が余程昌平らしい。
「言ったらお守りの意味あらへんし」
「ちぃとくれぇ良いじゃねぇか」
「ほら、練習行きますえ」
「へいへい」
そっと袂の小袋に触れて、世海がぽつりと言う。
「…言える訳あらへん」
(ちぃと前に昌平に貰ったラムネ瓶のビイ玉なんやよ)