「そなたは何故私を好きになったのだ…?」
繰り返し問われる言葉。
そして、その度にこう返してやる。
「じゃあ、アンタは何でアタシを好きになったんだよ?」
すると、質問しているのは自分だと拗ねた様に顔を背けるから、頬にキスをして抱き締めてやる。
「…直ぐにそうやって誤魔化すのだ、そなたは」
ぎゅっとアタシの背中に抱きつきながらも不服そうなグリシーヌに思わず目を細める。
アタシの好きな顔だ。
「ああ、誤魔化すさ」
「…何故なのだ?」
じっとアタシの目を見つめ返してくるグリシーヌの瞼にキスを落とす。
「そんなの決まってるじゃないか」
髪を撫で、頬を撫で、啄む様なキスを繰り返して。
「こんな風にアンタを宥めて、アンタに触れる理由を作ってるんだからね」
そう言うと、忽ちに頬を染めてアタシの首元に鼻先を寄せて来る。
「…馬鹿者。その様な理由などなくとも…」
その言葉を継ぐ様に、そなたに触れられたいと思っているのは私の方だと恥じらいを含んだ声で言われれば、それだけで。
「…口実は大事なんだぜ?」
緩みそうになる口元を抑えながら囁く。
「口実があるから、時間は尊いものになるからね。…少なくとも、その時間はアンタに触れて良い時間だ」
アタシがそう言うと、今度は不安そうな顔でアタシを見つめて来た。
「…では、口実がなければそなたは私に触れぬのか…?」
「触れたいってのも、立派な口実だろう?そんな事も解らないのか?…馬鹿だからか?」
フンと鼻で笑ってから、グリシーヌを見ると一瞬ムッとした様な顔をした後、呆れた様に眉をハの字にして微笑んだ。
「…全く」
「ああん?どうしようもないだろう?」
「…疾うにお互い様だな」
そう頭を振って、笑った。