外に出た瞬間に吹き抜けた風の冷たさに思わず身震いをした花火にグリシーヌがそっと自らのマフラーを花火に掛けた。
その気遣いに花火の口元が躊躇いがちに綻ぶ。
「…ありがとう、グリシーヌ。でも、あなたが冷えてしまうわ」
そうマフラーを返そうとした花火の手を制してグリシーヌが言った。
「この程度の風など私にはどうという事はない。それは花火が使ってくれ」
言い出したらグリシーヌは譲らない事を花火は知っている。
頷いて微笑み返すと、マフラーを巻き直した。
それを満足そうに見つめるグリシーヌ。
(…本当に可愛い人ね。)
「分かったわ。でも」
そう言って手を差し出す花火。
差し出された手の意味を理解出来ないで居るグリシーヌの手に指を絡めて握ると目を細めて。
「…せめて、あなたの手だけは冷えない様に私に温めさせてくれる?」
「あ、ああ…」
花火のその行動にようやく思考が追いついたのかグリシーヌの頬に紅が差す。
「行きましょうか」
「うむ」
手を繋いで歩く冬の日。