「…お前は…判っていたのか?」
サロンでの茶会が終わり、ルイスと二人で部屋へと戻る途中にヒューゴがポツリと言った。
「…音子さんの事ですか?」
「…他に何がある…」
俯いたヒューゴを見つめ、小さく微笑むとルイスが答えた。
「…そうですね。彼女ならあなたを救えると思っていました」
「……」
「何故?という表情ですね。…だって、あなたは彼女が来たその日から誰よりも彼女を意識していたじゃないですか」
穏やかな表情でそう言ったルイスとは対照的に目に動揺の色を映すヒューゴ。
「…戦場に不似合いだと思っただけだ」
「…そうですね。あの方たちはともかくとして音子さんは普通の方だ」
「ああ…」
「でも、それだけではなかった…。彼女は私たちが思っていたよりも強くて寛い方でした。そうでしょう?」
「…その上、頑固だ」
「ふふ。あなたと同じですね、ヒューゴ」
「………」
ルイスの言葉にフッと小さく笑って返すと顔を上げてヒューゴが言った。
「…共に守っていけばいい」
「ええ」
そう頷いた後、いつもの穏やかな笑みを浮かべたままルイスがヒューゴに意味深な視線を送る。
「?何だ」
「いいえ。1つだけあなたに言っておこうと思いまして」
唐突なルイスに不可解な表情を向けてヒューゴが見つめ返す。
「…音子さんを守りたいと誰よりも強く思っているのは私だと思っています。…それは例え、あなたが相手でも手を緩める気はありません」
「ルイス…?」
「私の言っている意味がお解りですよね?」
「……」
「だから、あなたも決して手を緩めないで下さい、ヒューゴ」
「俺は…」
ルイスの思い掛けない告白に戸惑いを見せて深く息を吐くとヒューゴはルイスの肩をポンと叩いた。
「…守りたいのは一緒だけれど、一緒じゃないんです」
ルイスの言葉を意味を噛みしめて目を細めると、ヒューゴは無意識に胸のペンダントヘッドをぎゅっと握って。
「…ミヤビは俺が守る…」
そう呟く様に言って部屋へと戻った。
「…私も負けませんよ、ヒューゴ」
ヒューゴの背中にルイスも呟いたのだった。