初めてその手の温度を知ったのは偶然だった。
練習室ですれ違い様に軽く触れた時、その冷たさに驚いたのを覚えている。
僕だって体温が低い方だと言うのに、僕が温かいと思うのだから僕よりも体温が低いという事だろう。
今より寒くなったら、アイツは僕よりも寒がるのだろうか。
そんな事を思った。
それから少し経って少しだけアイツとの距離も縮まって少しずつ会話らしい会話になって来た頃には、その手にもう少しだけ触れたいって思う様になっていた。
兄さんがしてるみたいに簡単にアイツに触れられればいいのに。
僕は未だに偶然を装って触れる事しか出来ない。
でも、疑問が1つあるんだ。
『僕はアイツの手に触れてどうしたいんだ?』
その答えを考える程、馬鹿馬鹿しい答えしか出て来なくて顔が熱くなる。
しかも、その答えは1つと来てる。
…でも、それしか思い当たらない。
いい加減に観念しないと他の皆に持って行かれそうだ。
だから、今日も僕は言う。
「ミヤビ、手出したら金平糖やるよ」