咳き込んで咽せて胸に痛みを覚えうずくまっていると、いつの間に起きたのか鼓太郎が背中を擦ってくれていた。
「…ゴホッ、すまない…起こしてしまったか?」
「ううん。丁度、喉が渇いて水飲もうと思ってたところ。少し落ち着いた?」
「ああ。いつもすまないな…」
「それは言わない約束でしょ!」
ここに来てから何度繰り返した会話だろう。
謝ると笑顔でそう返され済まされてしまう。
「本当にお前には迷惑を掛けてばかりいるな。埋め合わせが大変だ」
半ば本気に半ば冗談交じりにそう言ったら、鼓太郎の顔が近付いて来て唇が軽く触れた。
「これで充分だよ、ギーさん」
顔に似合わず不敵な顔で笑った。