寝苦しさにふと目が覚めて、ぼんやりと顔に手で触れると額に汗が滲んでいる。
不快な蒸し暑さだ。
大きく深呼吸をして喉を潤す為にゴソゴソとベッドサイドのテーブルの上に手を伸ばしブランデーの瓶を引き寄せ手に取った。
琥珀色の液体を一口喉に流し込むと渇いた喉に度数の高いアルコールが沁みた。
この喉の熱くなる感覚が嫌いじゃない。
グリシーヌを欲しくなる衝動と少し似ている。
一瞬充たされ熱さを呼び起こしたと思ったら直ぐに渇いて次が欲しくなる。
アイツもそうだ。
熱くて心地好くて気持ち良くて何度も飛びそうになって。
ひたすら熱を奪っても直ぐに渇いてアタシの喉が満足する事はない。
ブランデーよりも癖になって、ブランデーよりも後味が良い。
その上、ブランデーよりもワガママで飲まれ方を選ぶときたもんだ。
どんな酒よりも極上で繊細でアタシを振り回してくれる。
ああ、そんな事を考えていたら喉が渇いてきちまった。
多分、アイツも起きて喉の渇きを潤したがっているだろう。
こういう時のアタシの勘は外れない。
ベッドから起き上がり、コートを掴むとアタシは扉を開けた―。