「すあま、また兄さんの頭に乗ってるの?」
庭の木陰で涼んでいる源二の頭にはすあまが、脇にはかのこ、膝の上にはもなかが擦り寄っている。
その様子に思わず吹き出す源三郎。
懐いているというよりそれはむしろ。
「みんな兄さんの事、仲間だと思ってるんじゃない?」
「はぁ?違うよなー?もなか」
膝の上で丸まって寝ていたもなかを抱き上げてそう問いかけるともなかは退屈そうに欠伸で返した。
「お前白状だぞ、もなかっ」
もなかの態度にムキになって文句を言っている源二に源三郎の口元が自然と綻ぶ。
「やっぱり、兄さんのこと自分たちと同じだと思ってるんじゃない。良かったね、兄さん」
わざと揶揄する様に言って源二の様子を見る。
「お前だってこいつらと一緒に寝てんだろっ。それこそ仲間だと思われてんじゃないのか?」
源二ならそう返して来るだろうと思っていた。
源三郎の口角が思わず上がる。
「…お生憎様。僕はこのコたちの面倒を見てるから主人だと思われてるよ。ね?すあま」
首を傾げてすあまの頭を撫でるとすあまがワンと返事をした。
すあまの頭を撫でながら悔しそうにしている源二の顔を覗き込んでみせる。
「ほらね?兄さんと僕じゃ立場が違うワケ」
くくっと肩を震わせて笑うと源二が拗ねた様に言い放った。
「どうせ、オレはこいつらと一緒だよ。一緒についでにほら」
そう頭を差し出す源二。
「何?」
「一緒だからこいつらみたいに頭撫でられてやるよ」
思い掛けないその言葉に源三郎の顔が一気に紅潮する。
「は?」
「もしかして照れてんのか?オマエ」
源三郎の様子に源二がニヤと笑う。
「に、兄さんが馬鹿な事言い出したって思っただけ!」
「ホント、オマエはさ」
源三郎を引き寄せて額同士をつける源二。
「詰めが甘いよな?源三郎」
不敵に笑った源二に慌てて顔を離す源三郎。
顔を背けるとすあまたちを起こして。
「そろそろ散歩に行こうか。じゃあね、兄さん」
すっかり朱に染まった顔を隠す様に踵を返すと、慌ただしくその場を後にしたのだった。