「それでもいいから」グリサジ グリ誕(12/04月作成)


 ひたすらに。
 苛立ちともどかしさが募る。
 「…何故に私の邪魔をする?」
 サジータと二人きりになる度にロベリアに邪魔をされること数回。
 遂には苛立ちをサジータにぶつけてしまい、口をきかないままに巴里に帰って来てしまった。
 シャノワールの楽屋にロベリアと二人きりになったところで、険しい顔になってロベリアを問い詰める。
 「邪魔?何の事だ?」
 惚けたように肩を竦めたロベリアを睨み付けるグリシーヌ。
 「判らぬという訳ではあるまい」
 眼光鋭いグリシーヌに気圧されるでもなく不敵に笑ってロベリアが言う。
 「…サジータの事だろう?」
 「…そうだ。何故に邪魔を致す」
 「他人様の幸せを見るのが気に食わないもんでね」
 「…本当にそれだけか?」
 人を喰った様な態度のロベリアを訝しげに見つめて、真意を量ろうとするグリシーヌに対し、態度を変えることなくロベリアが問い返す。
 「他に何があるって?」
 「…ならば、」
 邪魔をするなと言い掛けたグリシーヌの言葉を遮るロベリア。
 「…何をそんなにハマっている?アイツは知っているのか?」
 思い掛けないロベリアからの質問にグリシーヌの表情が一瞬揺らぐ。
 「…そなたにしては随分とお節介な事だな」
 「アタシもそう思うよ。全く、柄じゃないにも程がある。アンタらがどうなろうが関係ないってのに」
 自嘲気味に笑うとグリシーヌに背を向け、踵を返して部屋を出て行こうとするロベリア。
 「…考えなかった訳ではない。だが、それでも欲しいと思ってしまう。私の我が儘なのかもしれぬな」
 ロベリアに向けるとも自分に向けるとも取れる様に呟いたグリシーヌに返事をしたのは、思い掛けない声。
 「…大丈夫だよ。アタシをそんじょそこらの奴等と一緒にしないでよ」
 聞き間違える筈のないその声に耳を疑い後ろを振り返ると先程までロベリアが居たであろう其処に立って、サジータが微笑んでいる。
 「ろ、ロベリアはどうしたのだ?!」
 「行ったよ。アタシと入れ違いにね」
 独り言を聞かれてしまった決まり悪さで複雑な表情のグリシーヌ。
 「そうか…」
 「久し振りだね、グリちゃん」
 「うむ。…その、そなたに悪い事をしたとは思っている」
 紐育で苛立ちを隠せなかった事に触れるとサジータはいつものように笑って「気にしてないよ。アタシも悪かったし」と返して。
 グリシーヌの前まで歩くと、屈んでグリシーヌの肩に顎を乗せる様に擦り寄って来る。
 「ああ。グリちゃんの匂いだ」
 嬉しそうにそう言ったサジータの頭を撫でる。
 「そなた一人で来たのか?」
 「ううん。名目上は仕事だから昴も一緒だよ。ロベリアとどっか行っちまったけど。ああ、でも間に合って良かった」
 ホッとした様に息を吐いたサジータに首を傾げるグリシーヌ。
 「?間に合った?何にだ?」
 グリシーヌのその疑問に呆気に取られたのか一気に肩を落としてサジータが言う。
 「誕生日だよ、グリちゃんの!明日でしょ!忘れてたの?」
 そう言われて。
 タレブーが忙しなく動き回っていたことを思い出す。
 何かを聞かれた気もするが、何と答えたのかさえうろ覚えだ。
 「もうそんな時期であったか」
 自分の誕生日さえ忘れるほどサジータの事を考えていたのかと妙な可笑しさが込み上げて来て声を出して笑うグリシーヌ。
 「ふ、ふふっ。そうか。私の誕生日か」
 「だ、大丈夫?疲れているんじゃないの?」
 突然笑い出したグリシーヌをサジータが心配そうに見つめる。
 「大丈夫だ。心配するな。そなたの事ばかりを考えて失念していただけだ。…そなたは私の誕生日を祝いに此方まで足を運んだのか?」
 「うん。直接、おめでとうって言いたかったし。この前の事も謝りたかったし、言いたい事もあったからさ」
 「言いたい事?何だ?」
 そう聞き返すと真剣な表情になってサジータが言った。
 「…グリちゃんの事情はね。知ってたんだ。それでも一緒に居たいって思ったから一緒に居るし、さっきも言ったけどアタシ結構頑丈でさ。ちょっとやそっとじゃ壊れないからさ。グリちゃんが楽な方を取って欲しいんだ。それにさ、後先なんてその時になってみないと分からないじゃない?」
 だからアタシは大丈夫だよと手を差し出したサジータの顔をジッと見つめる。
 ”必ず”と約束出来ない事があると解っていたのかとグリシーヌの目頭が熱くなる。
 俯いて息を一つ吐いてから顔を上げると、差し出されたサジータの手を取って手の甲と指先に口付ける。
 「私もそなたと一緒に居たいと思うから一緒に居るのだぞ、サジータ。本当にそなたが愛しくて堪らない。どれほど私を虜にすれば気が済むのであろうな、そなたは」
 目を細めてそう言うと髪留めを外し髪を解くと、サジータの躰をテーブルの上にそっと倒すグリシーヌ。
 サジータの首筋に鼻を寄せグリシーヌが言う。
 「ああ。そなたの薫りがする。たった一月だと言うのに本当に懐かしいと思う」
 「アタシもさっき同じ事言ったよ」
 「ふふ。そうであったな」
 二人で顔を見合わせて笑って。
 キスを交わした後に、穏やかに笑ってサジータの頬を撫でると急に真剣な顔になってグリシーヌが言った。
 「…そなたを泣かせる様な事だけはせぬと誓う。だから、私のそばに居てくれぬだろうか」
 「居るに決まってるでしょ?アタシこそグリちゃんのそばに居させてくれる?」
 「グリちゃん、ではないであろう?」
 グリシーヌにそう指摘されて苦笑して。
 照れ臭そうに頬を染めると、サジータが改めて言った。
 「アタシをグリシーヌのそばに居させてくれる?」
 「ああ。私をそなたのそばに置くが良い」
 再びキスを交わすと、サジータの首筋に唇を寄せた─。

 

~あとがき~

リクエストは「グリサジで両思いなのに昴やロベリアに邪魔されてイチャイチャできないシチュエーション」でした。
主にいちゃいちゃがメインなってしまいました。あれ?
グリの家の問題はグリのカプだとその度に上がってくる問題なのであえて触れてみました。
どのカプでもそれぞれ違う未来が待っていると思います。
しかし、この二人は気が付くと砂吐きだな!(笑)
そして、こっそりロベ昴仕様です…。
もとい。
グリお誕生日おめでとう!!

茉莉花さま、リクエストありがとうございました!

 
 
 

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